ランララな日に

● ランララな日に

 ここは多くの恋人達が集まる、女神の木の下。
 今日は恋人達にとって、特別なランララ聖花祭の日でもあった。
 もちろん、ここに来ているミキも例外ではない。
「トキオはまだかしら?」
 きょろきょろと辺りを見渡す。
 どうやら、まだ彼は来ていないようだ。
 ミキは視線を落とした。
 その先にあるのは、ミキが一生懸命作ったお菓子。
 それをミキは大事そうに持っていた。
「喜んでもらえるといいんだけど……」
 ふと思い出す。

「やっと出来たっ!!」
 ミキの目の前には、出来立てほやほやのお菓子があった。
 少しだけ、歪なクッキーが……。

「ふう……」
 思わずため息が出てしまう。
 果たしてトキオは、ミキのクッキーを喜んでくれるのだろうか?

 一方、トキオはというと。
「あ、ミキ発見!」
 さっそく声をかけようとしたのだが……それを止めた。
 トキオはくすりと笑う。
「良い事考えちゃった♪」
 どうやら何かを思いついたようだ。
 静かにトキオはミキの後ろに近づき。

 がばっ!!

 トキオは、後ろからミキを抱きしめた。

「きゃっ!」
 ミキは驚き後ろを睨んだ。不埒な輩ならば、その鉄拳をお見舞いしてやろうとも思っていた。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「と、トキオ?」
 思わず、その手を引っ込めるミキ。
 トキオは人懐っこい笑みを浮かべて、ミキを抱きしめている。
「もう……驚かせないで……」
 安心したような笑みを浮かべて、ミキはトキオを見た。
 トキオは相変わらず、幸せそうな笑みを浮かべていた。
(「愛しています……ずっと、これからも……」)
 緊張した面持ちでそっと、ミキは手に持っていたクッキーを手渡した。

(「幸せだな……」)
 思わず心の中でトキオは呟く。
 こうして、二人でいられる事に幸せを感じていた。
(「愛しています。有難う、愛させてくれて」)
 トキオは心の中で、そう呟き、再び笑みを浮かべたのであった。


イラスト: 秋月えいる