幸せな時間 すーっと一緒に…

● 大好き

 ランララ聖花祭の日。
 可愛らしいバスケットを大事そうに抱えて、リオネアは彼を待っていた。
 最近なかなか会う時間の取れない大好きな人の姿を思い浮かべる。
 バスケットの中身は友達と一緒に、一生懸命になって作ったチョコレートケーキだ。
「……ちゃんと食べて貰えるでしょうかぁ……」
 不安げに小さく溜息を吐く。
 ぎゅっと猫のぬいぐるみを抱きしめた。
 見つけ易いように木の下に立って、リオネアはチェリウを待っている。
 絶対来てくれるはずと信じているのに、待つ時間はとても長く感じられた。
 人込みの中に彼の姿を見つけた時は、少しだけ気恥ずかしくて頬を赤らめる。

「チェリ、こっちだよう」
 大きくて手を振る大好きな人を見つけて、チェリウは朝露の花園を駆けた。
 木の下に二人で座って、リオネアが作ってくれた美味しいチョコレートケーキを食べる。
「とっても美味しいなの♪」
 チェリウの言葉に、リオネアはとても嬉しそうな笑顔を見せた。
 大好きな人と一緒にいると、とても心が安らいで行く。
 何処からか小鳥のさえずりも聞こえて来る。初春の優しい風が二人の髪を靡かせた。

「チェリ? もう寝ちゃったの?」
 ぎゅっと手を繋いだまま、彼はすやすやと安らかな寝息を立てていた。
 リオネアが連れて来た真っ白な子犬も、いつのまにか眠ってしまっている。
 ボクも眠くなっちゃった、とリオネアは小さく笑って大好きな人の寝顔に囁く。
「うぅん……リオ……」
 むにゃむにゃとチェリウが少女の名を呼ぶ。
「……大好きだよお……」
 寝言を聞いて、リオネアはもう一度微笑んだ。
 木の幹にもたれて目を瞑る。暖かな風は彼女を夢の世界へといざなってくれる。
「……ずっと……いっしょに……」
 願うように呟くリオネア。
 ランララ聖花祭の午後は安らかに過ぎて行く。
 ひらひらと舞う花びらの中で、膝の上に食べかけのチョコレートケーキを乗せたまま、手をしっかりと繋いで幸せそうにお昼寝している二人のことを、枝の上から一羽の鷹が見守っていた。



イラスト: どり