・・・・意外なプレゼント?・・・

● The stuffed animal is a spokesman.

 独り身で過ごすランララ聖花祭の午後。特に待ち合わせの相手がいる訳でも無いけれど、ゼロは女神の木の下を訪れていた。何気ない表情とは裏腹に、何かを期待する様に手にはぬいぐるみを持ち、沢山の人がいるとか、顔見知りはいないだろうかとか、そんな事を考えながら当て所も無く散歩する事暫し。ふと呼ばれた気がして振り向くと見慣れた金の髪が視界に入って、ゼロは足を止めた。
「……こんにちは」
「はい。こんにちは」
 まさか女神の木の下で会うとはと、互いの存在に驚いた様に見交わすエルドとゼロ。
 女神の木の下に爽やかな春の風が吹き寄せる。惑う髪を押さえながら、エルドが微笑みを零す。ゼロは少しだけぎこち無さを漂わせつつ微笑み返し、手にしたぬいぐるみを後背に隠した。
「折角だから少し散歩しようか」
「え……ええ、そうですね」
 友人同士、ごく自然にそう誘い共に歩き出してはみたけれど、何だかおかしい。
 取り留めの無い会話を楽しみながら、ゼロをちらりと見遣るエルド。ずっと後ろで手を組んでいるし、何だか長いバター色の尻尾が揺れている。ゼロがさり気無く隠そうとしているそれは、もしかしたら僕へのプレゼントだろうか。そう思いつつも言い出さず、エルドは春の午後を楽しむ様に歩みを進め。
 柄でも、無いし。
 エルドのさり気無い視線を感じつつ、ゼロは縫い包みを更にぎゅっと握り締める。確かに……確かにエルドの為に作った物だけれど……。いざ本人を目の前にすると何だか思い切って渡せずに、ぬいぐるみの尻尾が悲しげに揺れる。
 照れた様な躊躇い漂うゼロの姿はある意味とても微笑ましく、ずっと見ていても良かったけれど、やはり後ろに隠した物の正体が気になって、エルドは水の如くに煌くゼロの髪を軽く叩いた。
「何を持っているんだい?」
「あ……ええと……」
 足を止めてエルドを見詰めるゼロ。
「うんうん」
 言葉の続きをのんびりと待つエルド。
「……プレゼント、です。……別に特別な意味はないですからね?」
「有難う」
 ゼロがぐいと差し出したぬいぐるみを受け取るエルド。バタースコッチカラーのフェレットのぬいぐるみを見て、微笑ましく目を細めた。
「手作りかな? とても可愛いよ。大切にするね」
「何となく作ったからあげるだけですからね!」
 顔を真っ赤にして言い募るゼロの頭を優しく撫ぜながら、はいはいと答えるエルド。
 その、撫ぜる手の暖かな感触に、ゼロは益々照れながら俯く。
「本当に、有難うね」
 最後にぽんと軽くゼロの頭を叩いて、歩き出すエルド。咄嗟にゼロが顔を上げると、振り向いてフェレットのぬいぐるみを胸元に掲げ、エルドは柔らかく笑った。


イラスト: 茶壱