ランララ聖花祭〜Sweets Time〜

● 『切望』この平穏を永久に

 試練を越えて女神の木に辿り着いたローディは、待っていたリトゥールと木の上に登っていた。
「大丈夫ですか? リトゥールさん」
 ローディは彼女が登りやすいようにとサポートし、2人は一緒に手頃そうな枝の1つに並んで腰掛ける。
「いい眺めですね〜」
 見晴らしの良い、木の上からの景色を眺めるリトゥール。
 ランララの丘には、他にもたくさんの人がいる。けど、こんな風に木の上まで来れば……周囲に、他の人の姿は無い。
 ここには、今、2人だけ。
 その事を嬉しく思いながら、リトゥールは用意しておいた、お饅頭を手にする。
(「……せっかくのランララなんですから。普段できないような「はい、あーん♪」とか……!」)
 ちょっぴり頬を赤くしながらも、そういう事が出来たらいいなと思うリトゥール。
(「……そこは度胸です!」)
 すーはーと1度深呼吸して、リトゥールは意を決したように頷くと、ローディの方を向く。
「はい、ローディ。食べて下さいっ」
 彼の口元へとお饅頭を差し出しながら、そう見つめるリトゥール。その言葉に、ローディは「ええ、いただきます」と頷くと、ぱくんと一口お饅頭を食べる。
「美味しい……ですか?」
「ええ、とても。ほら、リトゥールさんも一口」
 正直な所、和菓子はあまり自信が無かったリトゥールは、少し不安そうに彼の反応を見つめる。そんな彼女に、ローディは優しく微笑みながら頷くと、彼女にも食べるようにと勧めた。

「……その、2人だけって久しぶりですね。最近、会えてなかったですし……」
 ちょっぴり苦笑しながら、口を開いたリトゥールは、「でも」とローディを見上げた。
「今日のランララ聖花祭は、一緒に過ごせて凄く嬉しいです!」
 楽しげに告げるリトゥールに、ローディは「私もですよ」と頷くと、そっと彼女の肩に寄り添う。
「……こうやって貴女と過ごしていると、また貴女を好きになっていく……。声を聞いて、姿を見て、貴女に触れて……愛してますよ? リトゥールさん」
「ローディ……」
 彼の言葉に、更に恥ずかしそうに顔を赤く染めて、リトゥールはそっと彼のぬくもりに触れる。
「私も……。本当に、幸せなんです。ローディがいてくれるだけで、目に映るモノ全てが、何倍も綺麗に見えるから……」
 身体を寄り添わせて、リトゥールは想う。
 ……このままずっと一緒に居られたらいいと、願って止まない。
 けれど皮肉なものだ。エルフである彼と、ドリアッドである自分とでは、流れる時間が違う。
 いつかは……。
 でも、今はただ、このままで良いとも思う。
 不安が無いと言えば嘘になるけれど……だからこそ。せめて、不安を感じなくなるように……ぬくもりを、感じていたい。
「………」
 2人は身を寄せ合い、大切な人のぬくもりを互いに感じながら、過ぎていく時を過ごすのだった……。


イラスト: moca