ランララ聖花祭―愛し君と―

● ランララ聖花祭―愛し君と―

 星屑の丘の上はその名の通りに、煌く無数の星々に彩られており、正にランララ聖花祭の夜を過ごすに相応しい夜だった。カグラとスティアライトは、柔らかな肌触りのラグの上に座って1枚の大きなマントに包まる。
「綺麗……ですね」
 呟くスティアライト。夜の様な漆黒の髪が流れ、赤い瞳に星明りが煌く。星屑の丘の頂で、満天の星空を背景に星を見上げるスティアライトは、カグラの目にははっとするほど美しく見えた。
「星も綺麗だけど、スティアの方が綺麗だよ……」
 思わずそんな言葉を口にするカグラ。見る間に、スティアライトの頬が染まる。ただでさえカグラの体温を身近に感じて鼓動は高鳴るばかりなのに、綺麗だと言われて、胸の鼓動が伝わってしまいそうだとスティアライトは思う。
 渡さないと。今、渡そう。
 そう決意したスティアライトは、思い切ってカグラへと差し出した。
「あの、カグラさん。私、お菓子作ってきたので……」
 にっこり笑ってありがとうと包みを受け取るカグラ。包みを開けばクッキーが現れた。期待に満ちた沈黙が流れる。カグラに見詰められたスティアライトは、口元を和ませるとクッキーを一つ摘まむ。
「……どうぞ、です」
 スティアライトの、消え入りそうな恥じらい混じりの声。カグラはぱくりと一口でクッキーを食べた。
「美味しい〜」
 甘く香ばしいクッキーを噛み砕けば、ほろりとチョコレート生地が蕩け、確かに美味しく。何よりも、愛する彼女が自分の為に作ってくれた事が嬉しくて、美味しいクッキーがより一層幸せな味に感じられた。
「……良かったです……」
「こんなに料理の上手な恋人がいてボクは幸せだよ〜」
 喜んで貰えて良かった、と安堵した様に微笑むスティアライトの手からもう1つクッキーを食べて、カグラは幸せそうに笑う。
 その笑顔は、スティアライトを幸福な気分にさせた。ずっと傍に居て、笑っていて欲しかった。一緒に幸せなままで居たかった。だから、スティアライトは願うような眼差しでカグラを見詰め、そっと言葉を紡いだ。
「カグラさん……これからも、ずっと一緒にいてくれますか……?」
「うん。ずっと居たい。今この時も、これからもずっと……ね」
 感涙を眦に浮かばせるスティアライトの両頬を優しく掌で挟み込み、指先に髪を絡ませながら引き寄せカグラ。
「大好き、です……これからも、ずっと、ずーっと……」
 2人の大好きという言葉は触れ合う唇と唇の合間に呑まれ、吐息が返る。
 ずっと、一緒に。
 想いを込めて、カグラはスティアライトの唇に、更に深く口付けた。


イラスト: 鍵裕一郎