ぬくもりのかたち
● 星降る丘で
ランララの木の下で待ち合わせて、ケイカはシキと共に星屑の丘へとたどり着いた。
「うっわーーー! ケイカ、見てよ! こんなに綺麗な星空っ……」
降るような星を見上げながら、シキははしゃいでいた。
その様子をケイカは、瞳を細めて笑みを浮かべる。
「シキさん、はしゃぎすぎて転ばないでくださいね?」
と、思い出したようにシキは振り返り、ケイカの元に戻ってくる。
「あ……、そうだ……ケイカ……これ……」
緊張した面持ちで、シキは懐から出した、可愛く包装された小箱をケイカに手渡した。
それはシキが1時間以上もかけて選んだ、たった一つのプレゼント。
「開けてもいいですか?」
「も、もちろんっ」
ケイカが貰った箱を開けていく。
「あっ………」
箱の中には、可愛い髪飾りが。
「…………」「…………」
互いに言葉を失っていた。
その事にシキは不安を覚える。シキの頭の中には、ケイカの口から語られるだろう、断りの言葉がぐるぐると回り始めていた。
「………すん」
ケイカが涙を浮かべた。
「ご、ごめん! ケイカ!! い、嫌だったよなっ…!!」
その言葉にケイカは首を横に振る。
「違うんです、その……嬉しくて……」
シキはもう、ケイカのその行動よりもケイカの涙を止めるのに、精一杯だった。
「そうだ、髪飾り! な、つけてやるよ。貸して」
半ば強引にケイカの頭に髪飾りを付けてやるシキ。
「ありがとうございます……シキさん……」
けれど、なかなか顔を上げることができないケイカ。
「そうだ!」
シキはえいっとケイカを座らせ、その膝に頭を乗せた。
いつもは小心者の彼も、今日だけは違うようだ。
「……し、…シキさんっ!?」
「うん、良く見える」
やっとケイカの顔を見れて、ご満悦のシキ。ケイカは諦めたかのように微笑んだ。
「……ぁ! シキさん、少し目を瞑ってもらえませんか?」
恥ずかしそうにケイカはそう、シキに告げた。
「ん……」
ケイカに言われ、目を瞑るシキ。
シキの胸に何かが乗せられた。
「いいですよ……」
シキの目の前に小さな小箱が乗せられていた。
「開けてもいいかな?」
シキの言葉に、こくりと頷くケイカ。箱の中には美味しそうなチョコレートが入っていた。
「ありがとう、ケイカ。嬉しいよ!」
さっそく食べて、美味しいを連呼するシキ。
と、シキが食べ終えたところで、ケイカがそっと頬にキスをした。
「………おまけです……。初めてのチョコで……満点は出せなかったですから……」
そして、ケイカは続ける。
「あなたを好きだって気持ちは、誰にも負けません……だから、ずっと……そばに置いて下さい……」
俯きながら、頬を染めてケイカはそう告げた。
それは、ケイカの願い、愛の告白。
「いつか……俺に嫌気がさすかも……よ……?」
不安を覚えるシキは、思わずそんなことを口にしていた。
ケイカは微笑み。
「なりませんよ。弱い部分もあなたの一部です。シキさんがシキさんであるから、私は好きになったんです」
その言葉にシキは胸が熱くなるのが分かった。
「弱い私をシキさんは嫌いになりますか?」
その問いにシキは即座に答えた。
「絶対ならない…なれない」
そして、また口を開くシキ。
「俺は……頼りにもならないし迷惑かけてばっかだけど……ケイカが許してくれるならずっと傍に……一緒に居るよ……」
そのシキの言葉にケイカは微笑んで頷いたのであった。
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イラスト: 風見カイト