星の瞬く丘でぬくもりを感じて・・・

●星の瞬く丘でぬくもりを感じて・・・

「こうしていると、星に手が届きそうです……」
 夜の帳が下り、星々が瞬く星屑の丘で、メイは大きく天を仰いでいた。
 星達の微かな光を受けながら、そう呟きながら、いつも以上にはしゃいでしまっているなと小さく笑うと、すぐ傍にいるゼクトの方を振り返る。
「……子供っぽい事をしてしまいました」
 言いながら、彼の隣へと向かうと、既に腰を下ろしていた彼の隣に、同じように並ぶメイ。
 そんな彼女の様子を、ただ笑って見ていたゼクトへと、メイは忘れないうちにと1つ尋ねる。
「甘い物は平気ですか?」
「甘い物? ん、平気だけど?」
 そうれがどうかしたのかと、反対に尋ね返すように答えた彼の言葉に、メイは「良かった」と微笑むと、用意しておいたチョコレートに、ライラックの花を添えて渡す。
「これを俺に? いいのかい?」
 頷き返すメイに、ゼクトはにこやかに笑いながら礼を告げると、彼女の肩にそっと腕を回す。
「………」
 そんなゼクトの肩へと、メイが頭を置くと、不意に二人の視線が絡む。
 指先が、さりげなさを装いながら、髪へ、頬へと触れて来て……メイはドキドキと、胸の鼓動が高まるのを感じる。
(「……こうも信じたいと思った人間は、初めてだねぇ」)
 ゆっくりと、メイの髪を梳くように撫でながらゼクトは思う。
 裏切って、裏切られて……ずっとその繰り返しの中にあったというのに。
 もしかしたら、またと、そんな気持ちが微かに過ぎらないと言えば、嘘になるけれど。
 でも……。
「……メイのことだけは、ずっと信じていたいよ」
 彼女と共にあることが幸せだから――そうゼクトは囁く。
「私、も……」
 寄り添いながら、響いて来る声と、伝わって来るぬくもりを感じながら、メイは瞳を伏せる。
 これからも、ずっと彼の隣にいたい。
 本当は、ずっとこの胸の中に、飛び込んで行きたかったのだから……。
 抑えきれない想いは、もう、溢れてしまいそうで――。
「あいして、います……」
 彼の目を見つめながら、零れるように口から発せられた想い。
 ゼクトは、ただ無言で微笑んで……彼女の口元に指先を添えると、ゆっくりと唇を寄せて……。

 重なり合い、1つになっていく2人の影を、きらめく星明りが優しく照らしていた……。


イラスト: 市原あおい