ランララ聖花祭

● 子供がこんな事していいんですか?

 ランララ聖花祭の日の昼下がり。
 シロナとルシファーの2人は、女神の木の下にいた。
「はい、あ〜んして?」
 シロナは予め用意しておいた、ハート型のチョコレートを手に、そうルシファーを見つめる。
 彼女に言われるままにルシファーは口を開くと、シロナが持つチョコレートが彼の口元へと運ばれていくが……。
「このチョコ……ちょっと堅いです」
「え、本当? ごめんね」
 一口、それをかじったルシファーは、何とか噛み砕けた小さなかけらを舌の上に転がしながら、そうシロナを見やり。そんな彼の言葉に、シロナは申し訳無さそうにすると……ふと、何かを思いついた様子で、口を開く。
「えっと、目……つぶってくれる?」
「目ですか?」
 どういう事だろう? という疑問を顔に浮かべながらも、ルシファーは言われるまま瞼を閉ざす。彼がしっかりと目を閉じている事を確認しながら、シロナは手の中のチョコレートを、口元へと寄せて……。

 ちゅっ。

 やがて、唇に触れた柔らかい感触に、ルシファーは思わず目を開けた。
 と、それと同時に、触れたその感触を通じて、甘く暖かいものがルシファーの口の中へと流れ込む。
「えへへ……♪」
 やがて離れたシロナは、少し恥ずかしげに頬を赤くしながら笑った。
 チョコレートが堅いならば……柔らかくなるまで、溶かして、それから食べてもらえば良い。
 シロナはそう考えて、それを実行したのだった。そう……自分の口の中で、チョコレートを溶かして、それをルシファーに食べさせたのだ。
「シロナ……」
 何が起きたのかを把握したルシファーは、顔を赤くしつつも「ありがとう」とシロナに告げると、そんな彼女の身体を抱き寄せて……今度は、反対に、自分の唇でシロナへと触れる。
「も、もう……」
 シロナは、先程よりも、より恥ずかしそうに顔を赤くして……2人は互いに赤くなったまま、お互いにお互いを見つめ続ける。

「……これからも、ずっと……ずっと、一緒にいてください」
「ええ、私の方こそ……。あなたに会えて、良かったです」
 視線を交わし合いながら、2人は互いにそう気持ちを通じ合わせて……相変わらず、顔を赤くしたまま、互いにチョコレートを食べ合うのだった。
 大きな大きな、女神の木の下で――。


イラスト: どり