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大好きとありがとう
カガリは女神ランララの木の下で、ある人を待っていた。
少し落ち着かない様子で、けれど、嬉しそうで。
「タケマルはん、試練越えて来てくれるやろか。最近厳しくなっとるしなぁ……色々と」
ふと顔を見上げ、麓からの道を眺めた。
「カガリさん」
「タケマルはんっ」
タケマルは手を振りながら、やってきた。ちょっと服がよれよれなのは気のせいだろう。たぶん。
「お待たせしましたです。……最近は寒い日が続いてますが、今日は良い天気ですね♪」
タケマルは良い天気の空を見上げながら、そうカガリに話しかける。
「そうやね。良い天気やわ」
いつも通りの陽気さにカガリは嬉しそうに微笑んだ。
ランララの木の下から、移動した二人。
二人が来たのは、小鳥のさえずりが心地よい、小さな泉の畔であった。
麗らかな風に吹かれながら、二人は泉の周りをゆっくりと散歩する。
カガリの手に、タケマルの手が触れた。
二人は照れたように顔を見合わせ、そして、手を繋ぐ。
頬を染めながら、二人はまたゆっくりと散歩を続けた……。
「だいぶ歩きましたね、少し休みましょうか?」
「そうやな、ちょっと疲れたわ」
タケマルの言葉にカガリも頷く。カガリはきょろきょろと辺りを見渡す。二人が座るのに丁度良い場所を探して。と、そのとき。
「こんなこともあろうかと!」
タケマルは懐から颯爽と、敷物を取り出した。さっそく、敷物を草原の上に敷き、カガリを座らせる。
「敷物を用意してるなんて流石やな、タケマルはん」
「そう言っていただけると嬉しいですよ」
にこっと微笑むタケマルが眩しく見えた。
「……タケマルはん」
少し緊張した面持ちで、カガリはタケマルを呼ぶ。
「なんでしょう?」
「聖花祭の贈り物……はいっ」
そういって、カガリは綺麗にラッピングした箱を手渡した。
「『ありがとう』と、その……『大好き』な気持ちを詰めて作った、つもりなんやけど……。いつもありがとさんな。受け取ってもらえると嬉しいの」
頬を染めながら、カガリはそう伝える。
「あと、えと、ありがとうです」
タケマルも頬を染めながらも、とても嬉しそうな笑顔を見せ、そのプレゼントを受け取った。
さっそく箱を開けてみるタケマル。
「!! ……これは凄いですね……」
箱の中にあったのは、三色のチョコレートで作られた花のリース。その花全てがお菓子になっている。
「きっと作るのは大変だったでしょう? とっても綺麗で食べるのが本当に勿体無いです」
「そんなの、気にせんでええから。ほら、食べてみて」
カガリの言われるままに、その花の一つを口に運ぶ。
「うん、とっても美味しいです!」
その笑顔。それだけで、カガリは充分であった。
「何度も言い過ぎとも感じますが重ねてありがとです。でも、やっぱり私1人で食べるよりカガリさんと一緒に食べたいです。おいしいも嬉しいも、一緒に感じていたいんで……あっ、いや、その……」
カガリの嬉しいセリフはなおも続く。
「ええよ、一緒にたべよ、タケマルはん」
小鳥のさえずる泉に、花びらが舞っていた。ゆらゆらと嬉しそうに……。
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イラスト:柚
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