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祈〜一番安心できる場所〜
太陽が沈み、夜の帳がおりた星屑の丘。
夜になれば美しい星空が堪能できるという、その評判通りに見事な星空の下、ツキトとコユキは東屋の中で、二人並んで腰かけていた。
体を寄り添わせる二人の手には、それぞれ杯。
ただ静かに、無言で、それを傾けながら星空を見上げる。
(「また、この日が来ましたか……」)
ツキトにとって、この日はランララ聖花祭であると同時に、友人の命日でもある。
……それを、いつまでも悲しんでいてはいけないと、良くない事であると分かっていても、永久の別れに思いを馳せながら、こうして過ごすのを止められない。
それを、よく分かるから、コユキもただ黙って、ツキトの隣に寄り添いながら星空を見上げる。
ユキトの友人は、コユキにとっても友人であったから、それを悼む気持ちが無い訳ではない。
けれど、コユキにとっては、それを引きずり続ける事よりも、その想いを受け継いで進んでいく事の方が重要だと、そう思っていたから、ツキトほどしんみりとした様子は無い。
ただ、彼の気持ちの整理がつくのを、寄り添いながら、待ち続けているだけだ。
……言葉は、いらない。
長年、公私共のパートナーとして過ごしてきた二人には、言葉など無くても、ただ寄り添うだけで十分だった。
「風となり、星となり、その傍に帰るだろう……か……」
やがて、月が天上へ昇りついた頃、不意に発せられたコユキの呟きが、辺りに満たされていた沈黙を破った。
彼女の言葉に、ツキトがゆっくりと、不思議そうな視線を向ければ、コユキは彼の疑問に答える。
「鎮魂歌、よ」
「ああ……確かに、そうかもしれないな……」
その言葉を噛み締めて、ツキトは頷く。
(「きっと、あいつも……」)
その魂は風に乗り、星となって……ああ、きっと、今のこの自分達の傍にいるのだろう。
……ツキトが、そう空を見上げた時、二人の間に緩やかな風が吹いた。
「……コユキ」
ツキトは、それ以上の事は言わず、酒瓶を手に取ると、その中身を、自分と彼女の杯にそれぞれ注ぎ、軽く目を伏せながらコユキと乾杯する。
そして二人は、緩やかに流れる星屑の丘での夜を、共に過ごすのだった……。
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イラスト:霧生実奈
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