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ただ一緒にいて欲しい
妹のように思っていた。
そんな彼女からの誘いにタカテルは戸惑っていた。
彼女の気持ちを、どこまで受け止めたらいいのか。
タカテルはそっと、隣に居るチハヤを見た。
奉仕種族として、辛い過去をチハヤは持っていた。
だからこそ、タカテルを思う気持ちにブレーキをかけてしまう。
自分は穢れた存在だから。
恋人になれなくてもかまわない。妹のように思ってくれてもかまわない。
ただ、タカテルの傍にいたいと思う。
でも、できるのならば……。
そっと、タカテルはチハヤの手を取った。
びくりとチハヤの手が動く。
けれど、離れる事はない。
「座って、星でも見ませんか?」
チハヤは手を繋いでいることを感じていないように、そうタカテルに尋ねた。
「ええ、そうですね」
辺りを見渡し、座れる場所を見つける。
「たまには、こんな静かな時間も悪くないですね」
タカテルとチハヤは、見つけた場所に座って、顔を見合わせた。
「はい」
チハヤは素直に頷く。僅かに笑みを浮かべて。
静かな時間が過ぎていく。
二人は空を見上げて、星を眺めている。
小さい光だというのに、太陽よりも眩しくみえるのは、気のせいだろうか。
「……どうして、私を誘ったんですか?」
思わず尋ねたタカテルの言葉に、チハヤは淀みなく答えた。
「ただ、一緒にいられたらいいなと思って、思い切って誘ってみました」
「そうですか……」
タカテルはそういって、笑みを浮かべる。
チハヤも同じく笑みを浮かべる。
少しぎこちない二人。
けれど、その距離は、ほんの少し縮まったかのように見える。
重ねられた手は、まだ、繋いだままで……。
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イラスト:綺人
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