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Little Sweet Love〜はじめての…〜
仲良く手を繋いだリスリムとフェレーは、色とりどりの花達が咲き誇る、朝露の花園を訪れていた。
「今年もまた、一緒に来られて嬉しいよ」
「私もですなぁ〜ん」
にこりと微笑むリスリムに頷き返すフェレー。
二人は、適当な場所に座ると、持って来たお菓子を広げながら周囲を見回す。
「どれも可愛いお花なぁ〜んね。あれなんて、すごく可愛いなぁ〜ん」
「ああ、あれはマーガレットって名前だよ」
目を細めるフェレーに、リスリムはそう説明すると、何かを閃いた様子で立ち上がる。
「そうだ。せっかくだから……」
手を伸ばすと、近くのマーガレットを摘むリスリム。何を始めるつもりなのだろう? とフェレーが首を傾げれば、リスリムは器用に花飾りを作り始めた。
「ん、できた。フェレー、はい」
あっという間に出来上がったそれを、リスリムは彼女の頭に飾りつけた。
「ありがとうなぁ〜ん」
思いがけないプレゼントを喜ぶフェレー。そんな彼女に、リスリムも目を細める。
そのまま、周囲の花を楽しそうに見つめるフェレーの姿を、大切そうに、嬉しそうに、リスリムの瞳が追いかける。
「……フェレー」
不意に。
リスリムはフェレーに近付くと、そっと彼女の名前を呼んだ。
「? どうし……?」
振り返るフェレーの、その頬に。リスリムは唇を寄せた。
ちゅ、っと小さな音共に離れる唇。今、何が起きたのだろうと、フェレーは目を丸くして……。
「……ぅあっ、え……?」
何秒かの後ようやく、それがキスだったと理解したフェレーは、一瞬のうちに顔を真っ赤に染め上げると、口を何度も繰り返しパクパクさせた。
「えへへ……びっくりしちゃった……っ?」
そんな彼女に頭をかきながら、ほんの少しだけ悪戯っぽく微笑むリスリム。
でも、彼の方もドキドキしているのか、その頬が少しだけ赤い。
(「……いつも、手を繋ぐまでしか……だったし……」)
だから、思いきって。
それでもやっぱり、照れないと言えば嘘になるけど、リスリムは微笑みに嬉しさを滲ませる。
「び、びっくりするに決まってるなぁん……」
そんなリスリムに、真っ赤なまま言い返すフェレー。
びっくりして、ドキドキして、恥ずかしかったけど、でも、フェレーはそれを強く責めたりはしなかった。
「……来年も、また、二人で一緒に来られるといいな」
リスリムが……フェレーの大切な人が……そう柔らかく微笑みながら、見つめてきたから。
「うん……また来年も、その次も、ずーっと一緒に来ましょうですなぁん」
フェレーは、そう小さく頷きながら、リスリムの瞳を見つめ返すのだった。
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イラスト:縞海すずめ
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