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君に贈る、雪雫の花冠
「わぁ……とても綺麗ですね、アモウさん」
朝露の花園に咲く白い花々を見渡して、目を細めながら、そうサナはアモウを振り返った。
「ああ。今日は天気も穏やかだし、過ごしやすい1日になりそうだな」
そう頷き返して、アモウは空を見上げる。
高く澄んだ青い空。それがまるで、自分達を祝福しているかのように思えるほど、アモウは幸せだなと、今の時間を噛み締める。
去年、恋人同士として過ごした時間を、今年は夫婦として迎えている。
その事実がとても嬉しくて、言葉で表せないくらいに幸せだ。
「……サナ、これを……」
大切な大切な、愛しい人……サナ。
彼女の横に立ち、アモウは花の冠を取り出した。
それは、今日この日にサナへと贈る為、何日も前から準備していた物だ。
「わぁ……」
サナは、その純白の冠を前に、嬉しげに目を細める。
それはまるで、去年アモウと2人で夫婦の誓いを交わした、あのホワイトガーデンに咲いていた花を思い起こさせるような物だったから。
「俺の苗字、フィオールは『花』を意味するのだと、サナは教えてくれたな」
今日はランララ聖花祭。聖なる花の祭りの日……。
思えば、彼女に本物の花を贈った事は無かった。
誓いを交わしたあの日、サナは自分に、とても素敵な花冠をくれた。
「だから……今度は、俺からお前に贈ろう」
溢れるほどの思いを込めた冠を、両手で大切に抱え上げて、アモウはサナの髪に、そっとそれを乗せた。
(「サナの心に、いつまでも咲き続ける花となれますように……」)
その、願いに似た想いを込めながら、アモウは指先を離す。
「ありがとう、アモウさん。……似合ってます?」
「ああ、とても」
見上げるサナの笑みに、深く頷き返して、アモウは続ける。
「……サナ。愛してる」
「私も、愛してる……」
伸ばされた腕はサナの体をぎゅっと抱きしめ、同時に、アモウの背にも腕が回る。
見つめあう視線は、その瞳は、どちらも幸せに満ち溢れていて。
(「誰よりも深く、お前を愛してる――」)
(「誰よりも深くあなたを愛してる――」)
互いの気持ちを重ね合わせながら、2人は深く、口づけを交わした。
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イラスト:鳥居ふくこ
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