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あなたと過ごす幸せ
さわさわと、淡い色の花が、風に揺られている。
「やっと着きましたね……」
「ホント、大変な試練だったよ」
ふうと一息ついて、リオネルはシスを見る。
「シス、大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
にこっとシスは微笑んだ。
今、二人は朝露の花園に来ている。
綺麗な花々に囲まれた素敵な場所を見つけた二人は、そこで疲れた体を休めた。
二人とも、実は甘いものが大好きであった。
甘い香りに包まれる、このランララ聖花祭のようなお祭りは、二人にとって、嬉しいイベントの一つでもあった。
「あの、リオさん……」
おずおずとシスは、綺麗にラッピングされたお菓子の箱をリオネルに手渡す。
日頃の感謝と、友情とも愛情ともつかない気持ちをこめて、そっと……。
「ありがとう、シス」
リオネルは嬉しそうにその箱を受け取る。
「開けてもいいかな?」
「え、ええ」
シスの頷きを確認して、リオネルはその包みと、箱を開いた。
「わあ……」
少しいびつなチョコブラウニー。ただのブラウニーではない。リオネルが好きなナッツも入ったブラウニー。そう、箱の中にあるのは、シスの手作りナッツブラウニーであった。
嬉しそうな歓声を上げるリオネル。
だが、シスはそれとは逆に不安げな表情を浮かべていた。
かつてシスは、お菓子を作ってリオネルに渡したことがあった。
昨年の事、シスが焦がしてしまったお菓子をリオネルが食べた事がある。
その際、リオネルはなんでもないと言っていたが、しっかりと腹痛を起こしていた。
シスは昨年のその苦い記憶を思い出し、また同じ事を繰り返さないか。
それだけが心配であった。
そう思いながら、シスがそっと切り分けたナッツブラウニー。
美味しいお菓子をと心を込めて作ったもの。
今年は大丈夫だろうか?
リオネルに手渡す手が、僅かに震える。
リオネルは些細な事に気づかないのか、嬉しそうに受け取って。
「それじゃ、いただきます!」
フォークで切り分けて、一口食べる。
シスは半ば窺うように、リオネルを見つめている。
「うん、とっても美味しいよ!」
ぱくぱくと嬉しそうに食べるリオネルに、シスはやっと笑みを見せた。
どうやら、今年は大丈夫な様子。
「お茶を注ぎますね」
「あ、うん。ありがとう」
シスの注いだお茶を受け取り、さっそく口にするリオネル。
二人の甘い幸せなお茶会は始まったばかり……。
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イラスト:鳥居ふくこ
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