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いつまでもいっしょに…
「おそいなぁー……」
朝露の花園の中で、そうレイザは呟いた。
暇そうに伸びた指先が、そっと周囲の花を摘む。
「……まだかな、フィン」
1つ、2つ……摘んでは花を眺めて、大切なあの人が来るのを待つけれど、花の向こうに彼の姿が現れる気配はない。
まだかな? あと少しかな? ……いつ、来るだろう?
摘んだ花が増えるにつれて、どんどん待ちくたびれていくフィン。
とうとう、花を摘みながら待つのにも飽きて、小さく溜息をこぼしつつ、ふとポケットの中から小さな袋を取り出した。
「……喜んでくれるといいなっ」
その中には、旅団での知り合いから教わって作ったチョコケーキが入っている。
料理なんて普段は任せきりだから、味に自信は全然無いけど……渡すことに意義がある、とみんなに励まされて、勇気を出して持ってくる事に決めたのだ。
ああ、だから。
……早く来ないかな。
花を摘むレイザの背を眺めれば、ぱた、ぱたりと、その狐の尻尾が揺れるのが見えた。
それを見つめる視線の主こそ、レイザの待ち人であるバルドフェインだった。
少し前に到着していたバルドフェインは、少し離れた場所から、レイザの様子を見つめていたのだ。
しばらくレイザを観察していたバルドフェインは、薄く口元に笑みを浮かべつつ、自分に気付く様子のないレイザの名を呼んだ。
「あ、フィン!」
呼びかけにレイザはパッと顔を上げて、そのままバルドフェインの胸に飛び込む。
「っっと、危ないだろ?」
「だって待ちくたびれた……」
それを受け止めるバルドフェインの背に回された腕に、ぎゅっと力が込められた。
「あ……フィン、はい」
ようやく満足したのか離れたレイザは、ケーキの存在を思い出して、それを差し出した。
「なんだこれ?」
「んとね、チョコケーキ。作り方を教わりながら一生懸命作ったんだよ」
おいしい……と思う、と続けるレイザの言葉を聞きながら、バルドフェインは袋を開ける。
見た目はなかなか。では味は?
それを確かめるように、早速ケーキを口に運ぶバルドフェイン。
「ふぅん……お前にしちゃ上出来だろ」
「ホント!?」
そう呟いた彼の言葉に、レイザは嬉しそうに笑うのだった。
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イラスト:総裕
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