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A secret wish to entrust veil with
静かな夜。
朝露の花園では、彩り豊かな花がときおり、風に揺れている。
その花園に置かれたベンチには、ボサツとテフィンが座っていた。
二人の手には、香り豊かなワインが注がれているグラスが2つ。
「今夜は出向いてくれて本当に有難う。これからもどうぞ宜しく、なのだ……」
グラスがぶつかる小さな音と共に、ボサツは小さく乾杯と呟く。
「私の方こそ……宜しくお願い致しますの」
テフィンもこつんとグラスを鳴らして、同じく乾杯と呟いた。
テフィンは、ボサツの誘いによって、この朝露の花園に来ていた。もちろん、ボサツのエスコートする手に導かれて。
時折吹く、冷たい風も今なら、感じない。
琥珀色のワインの所為か? いや違う。
きっと、二人が一緒にここで過ごせるから……。
ワインの酔いが手伝ってか、二人は今までの不安な思いを告げ、確かめ合う。
そして、最後には。
「貴方はとても器用なのに……心は、魂だけは……とても不器用に見えますの。けれど、そこが……」
そういって、テフィンはボサツの耳元で囁いた。その言葉にボサツは瞳を細める。
「そう言って貰えるなら悪くはないと思えるけども……もう少し器用に生きたいもんだよ」
そう微笑んで、ボサツはそっと唇を重ねた。テフィンは、重ねられた唇に驚き、瞳を瞬かせた。
「………君に渡したい物があるんだ」
少しの間をおいて、ボサツはテフィンにそう告げる。
「……なぁに?」
僅かに首を傾げるテフィンに。
「此れをね、君に」
ふわりと掛けられたのは、白いレースのヴェール。
「君を心から愛しく想う。今宵、こうやって君と共に過ごせる時間に感謝しようと想うのだ。この感謝が……ずっと続けば良いな、と思っていたりもするけどもね」
「……!」
二度目の驚き。掛けられたヴェールを確かめるようにテフィンは触れる。その瞳には僅かに涙が滲んでいた。嬉しくてたまらない、その嬉し涙が。
「……貴方は、こうやって……私を驚かせてばかり。……どうしよう……今日も、泣きそうになってきましたの……」
「泣き虫さんだなぁ……」
嬉しそうに微笑むテフィンにボサツも笑みを見せる。
テフィンはそっとボサツの胸の中に体を寄せた。
「いつもありがとう……。何時でも必ず、心は……貴方の、傍に。……私も……」
最後の言葉は、吹く風に乗って、ボサツの耳だけに届く。
それはボサツにとって、なによりも嬉しい言葉。
二人は寄り添い、そしてまた口付けを交わした。
気が付けば、空が僅かに明るくなっているようである。
どれだけの時間を過ごしたのか、二人には分からない。
ただ、分かるのは、それは二人にとってかけがえの無い時間になったという事。
「今夜も遅くなってしまったなぁ……名残惜しいけど、そろそろ送っていこうか」
「はい。きっと何時までいたって名残は尽きませんもの……。帰路のお付き合い……お願いしますの」
二人はゆっくりと丘を降りる。
テフィンの頭には、白いヴェールが風に揺られていた。
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イラスト:山岡鰆
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