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月の見る夢 語る詩
暖炉の焚かれた暖かい部屋。
そこでラグズとリーティスは、仲良く布団を引いた。
「今日は何のお話を聞かせてくれるの?」
リーティスの言葉に、ラグズは微笑んだ。
「今日はこれを読もうと思ってね」
それは、悪い魔法使いに眠らされた王子を救う為、小人達と冒険に向かうお姫様の絵本であった。
「わあ、面白そう! ねえ、早く読んでっ!」
自分の枕を抱えながら、リーティスの瞳はきらきらと輝いている。
「それじゃ、暖炉の側で読もうか」
喜んでいるリーティスを嬉しそうに眺めながら、ラグズはその本を開いた。
今日はランララ聖花祭。
普通なら、ランララ聖花祭の会場に行き、お菓子を食べるのが恒例のイベントであろう。
だが、この二人にとって、それが必ずしも恒例というわけではない。
二人が楽しいと思う時を過ごす。これが二人の出した結論であった。
……とはいうものの、正直言うと、リーティスが幼い為……かもしれないが。
ラグズは、本を開き題名を読み上げる。
そして、ゆっくりとリーティスに読み始めた。
「昔々あるところに、森に囲まれた小さなお城がありました」
「うんうん」
リーティスに分かるよう、本文を指でなぞりながら、ラグズは読みあげていく。
ふと、ラグズは読んでいる最中にリーティスを見た。
本を見ているリーティスは真剣そのもの。
ラグズの言葉を聞き逃さないよう、夢中になっている様子。
(「何だか嬉しいね……」)
優しげな瞳で、もう一度、リーティスを眺めた。
「ラグズ、次、次!」
「あ、ごめん。えっと……『お姫様は高く険しい山道を、しっかり踏みしめながら先へ進んでいくと……』」
リーティスに促され、すぐさま続きを読み上げるラグズ。
物語は、序盤から、中盤へと差し掛かっていた。
もうすぐ、クライマックスというところで、ラグズは意外な敵と戦っていた。
(「くうっ! リートの為ながらば、眠気くらいっ!!」)
その敵の名は、睡魔。どうやら、疲れが溜まっていたらしく、本を読んでいるうちに、瞼がかなり重くなってきていた。物語は、もうすぐ呪いで目覚めた王子が、お姫様の危機を救わんと現れるシーンへと……。
「ラグズ? ……ねえ、ラグズ?」
しかし、そんな意気込みも強力な睡魔には敵わなかったようだ。
ラグズは気持ちよさそうに、幸せそうに眠っていた。
「わ、ラグズ、寝ちゃった!!」
大きな声を出しても、ちっとも起きない。
「残念」
ぽつりと呟いて、リーティスはラグズの眠りに邪魔な本を閉じて、布団の横に置いた。
物語を全て読むことができず、ちょっぴり残念だが。
幸せそうに寝ているラグズを見ていると、これでもいいかとリーティスは思う。
「おやすみなさい」
リーティスは願う。
穏やかで温かな時間こんな日々が、いつまでも……続きますようにと……。
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イラスト:鳥居ふくこ
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