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親子のてふまん〜蕩けるチョコの味〜
ランララ聖花祭。
恋人達と甘い御菓子の祭り。
そこに闘志を燃やす者がいた。
「という訳で、ランララ仕様のてふまん(チョコ餡)を売って売って売りまくるぞッ!」
「おおっ!!」
カエサルとレイの二人は、がっしとタックを組むと、二人の瞳がぴかーんと光った。
「甘いムードの恋人達のテンションを盛り上げる為に! 決して私欲の為じゃない! 断じて儲けの為じゃない!」
本当かどうかはさておき、そう意気込むカエサルの言葉に。
「てふまいを有名にする為に!」
同じく意気込むレイが続ける。ちなみにてふまいというのは、レイとカエサルが所属する旅団『蝶舞々』のことである。
二人はたくさんの饅頭が入った箱を背負いかつ、抱えながら、女神の木へと向かうのであった。
そして、到着。
さっそく饅頭を広げて、商売準備を始める二人。
「うーん……ほかほか美味そう……ちょっとつまみ食い……」
美味しそうな饅頭をこっそり摘もうとするレイの手を、ぱしんとカエサルが叩いた。
「つまみ食いは、メッ!」
「むぅ、良いじゃんかー」
仕方なくレイは仕事の準備に取り掛かった。
「いらっしゃい、いらっしゃいっ!! 安くしとくよーっ!!」
「甘くて美味しいてふまん。今日のてふまんはランララ限定のチョコ餡だよっ!」
凄い勢いで二人はてふまんを売りさばく。
二人の熱気は、寂しい一人身の支えになった。
お菓子をダメにしてしまった哀れな子羊を救った。
甘い時間をさらに甘くする為のカップル達の心をもゲットした。
甘いもの好きなお姉さんのハートもしっかり打ち抜いた。
そう、彼らは数多くの人々に美味しいてふまんを売り、幸せをも提供した。
気が付けば、あんなにたくさんのてふまんが、あっという間に消えていたのである。
「お疲れ、レイ。折角こんなトコまで来たんだから俺達も一息つこうぜ」
と、カエサルが手渡したのは、僅かに売れ残ったてふまん。
「わーっ、美味そう! いただきまーっ!」
レイは瞳を輝かせながら、てふまんを受け取り、すぐさまばくりと噛り付く。
「美味ーい!」
その様子を楽しげに眺めながら、カエサルも。
「うむ……我ながら美味だぜ」
満足げの様子。
「まぁレイとこーやって、二人っきりってゆーのも、実は珍しいよなん?」
カエサルの言葉にレイは黙って頷いた。
そう、こうやって二人きりという時間は、少ないかもしれない。だからこそ、伝えたいことも伝えられるのではないかと。
レイは、緊張した面持ちで、てふまん片手に口を開いた。
「こんな俺の事大事な家族って言ってくれて、一緒に居てくれて、ありがと。だいすき」
日頃の感謝を込めての言葉。レイはそれを告げた後、恥ずかしそうに頬を染めて俯いていた。
「……どういたしまして」
カエサルは大人びた微笑で、こう続けた。
「これからも宜しく頼むぜ、我が息子?」
てふまんを売りさばいた二人は、揃って女神の木の丘を下りていく。
その姿はカップルというよりも、仲の良い親子のように見えた。
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イラスト:アズ
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