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不器用な2人の優しい愛情
ランララ聖花祭の日、マナブとカインは女神の木で待ち合わせていた。
義理の兄妹という関係から恋人同士になって、まだ間もない2人にとって、今日は初デートの日。
とても嬉しい日のはず……なのに、カインの顔は、何故か浮かばない。
(「やはり、私はいつまでも『妹』としか見て貰えないのだろうか……」)
胸を占めているのはマナブのこと。
恋人同士になったというのに、彼の行動には、まだ自分を妹扱いするものが多い、ように感じる。
それはカインにとって、間違いなく心苦しく……そして、とても切ない事実。
(「1人の女として、自分を見て欲しいのに」)
その想いが強くなればなるほど、更に心は苦しくなって……だから。
カインは思いきって、口を開いた。
「マナブ、私は……こうして、デート出来る事が嬉しい。だけどマナブは、まだ私を妹として見ている気がするんだ。それが不安で……出来たら、私を恋人として、見てほしい……」
「カイン……」
寂しげな顔に、不安を色濃くあらわしながら、そう見つめるカイン。
彼女の姿に、マナブもまた苦しげになる。カインが時折見せる寂しげな表情。その原因が、未だ彼女を妹として扱ってしまっている事だと気付いたから。
でも……。
(「違うんだ。カインを愛し過ぎて、傷付けてしまう事が怖いから……」)
それは決して、彼女を1人の女性として見ていないからではない。ただ、それを恐れていた、それだけなのだ。
だからマナブは首を振りながら、彼女の瞳を真摯に見つめ、答える。
「俺はお前の事を、ちゃんと恋人として見ている。俺としては、お前に深く入り込み、傷付けたくなかったから、なんだけどな……でも、お前を不安にさせる態度をとってしまったのも事実。すまん、な」
マナブの言葉に、カインの不安が少しだけ溶ける。でも、尚もまだ硬い表情の彼女の姿に、マナブは小さく呟いた。
「そうだな……態度で示してみるのも、ありかもしれん……」
言葉と同時に、マナブはカインを背後から抱きしめる。
優しく、でも強く。
とてもとても大切な、宝物に触れている事が伝わるように。
「マナブ……」
最初は驚いたカインも、その温もりと力強さを感じ取ると、そっと彼の腕に、自分の掌を重ねた。
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イラスト:あそう葉月
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