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明日(未来)へ…
「やっとこれたですー♪」
朝露の花園の中で、そうコトナは両手を上げて体を伸ばした。
「晴れてよかったですね……」
そんな彼女を、ポルロは優しげに見つめながら呟く。
今日はランララ聖花祭。前から楽しみにしてた日だから、いい天気になって良かった。
(「だって、今日は……」)
3月になったら結婚する二人にとっては、独身最後のランララ聖花祭なのだから。
「……綺麗な空ですね〜」
こんな風に、素敵な空の日になって良かったと、コトナは大きく頭上を仰ぐ。
済んだように高く綺麗な青空を、ゆっくりと渡るように流れていく雲。
この先の結婚を前にして、感慨深いものがあると、そうコトナが空を見つけていると……。
「はい」
「え?」
すっと近付いたポルロの指先が髪に触れる。
いや、指だけではない。それ以外の何かが髪に差し込まれて……。
「やっぱり思った通りです。似合いますよ」
「これ……お花?」
そう微笑むポルロの前で手を当てたコトナは、それが花であると気付く。
小さくて可憐で、とても可愛い白い花……。
心がくすぐったくなるような嬉しさを感じながら、コトナは笑顔で、じゃあ私もと包みを手にする。
「結婚前の最後のチョコだから、気合入れたんですよ」
それを、想いを込めて差し出すコトナ。
ポルロはチョコを受け取りながら、嬉しそうに笑う。
「では、お返しは……」
すっとコトナに顔を近づけると、その頬に、ちゅっと小さくキスを贈る。
「にゃあぁ……」
そんなポルロの『お返し』に、コトナは真っ赤になって、恥ずかしそうに照れるのだった。
「ねえ、ポルロさん……」
照れ恥ずかしさで染まった赤みが抜けきらぬ中、コトナは彼を見上げる。
「また、来年も、その次も……ずーっと一緒に来ましょうね」
そう微笑む彼女を愛しく思いながら、ポルロは深く頷き返す。
「ええ。また……来年も来ましょうね」
ほんの少しだけ、自分の顔も赤いような気がするのは気のせいだろうか。もしかしてコトナのが移ったのかもしれない。
そんな事を少しだけ思いながら、ポルロは用意しておいたシートを足元に広げる。
「せっかくですから、少しゆっくりしていきましょう」
肩を並べて座ると、咲き誇る花々を見つめる二人。
その向こう側には、なんだか、自分達がこれから進む道の先が……新しく始まる二人の幸せな日々が、見えてくるような、そんな気がした。
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イラスト:枯野ハクヤ
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