● 女の子どうしでもいいよね?

 時間は少しさかのぼり。
 とある旅団でのこと。
「もうすぐランララ聖花祭ですね、皆さんは誰と行くんですか?」
 何気ない団員の一言。
 それにシンブが加わった。
「私はどうしようかしら……いい人居るかな?」
 思わず呟いてしまう。
「そういう『いい』話は、メイにはひとつもありません」
 少し寂しげな声でメイも加わる。
「なら、メイと一緒にっ!!」
「え? ……ええっ!?」
 ということで、少々強引(?)だが、2人は一緒にランララ聖花祭に参加する事となったのである。


 メイはばたばたと丘を目指していた。
 寝坊した訳ではない。
 ただ、今日着ていく予定の服が、突然着れなくなったのだ。
 朝食を食べている最中にうっかりとコーヒーを零してしまったのだ。
 それまで余裕のあった時間は、あっという間に過ぎ去り、気が付けばシンブとの待ち合わせ時間ギリギリまで掛かってしまった。
「急ぎませんとっ!」
 いくつもの試練を乗り越え、メイはもの凄いスピードで待ち合わせ場所に向かっていた。

 一方、シンブはというと。
「急がないと遅刻してしまいますっ」
 ランララ聖花祭の準備が意外に早く終わったのだが……余った時間で掃除を始めたのがいけなかった。
 掃除に集中するあまり、出かける時間を少しオーバーしての出発となってしまったのだ。
「メイを待たせるわけには、いきませんっ!!」
 メイよりも、もの凄い勢いで、シンブは丘を駆けていった。

 そして、いち早くその場所にたどり着いたのは、やはりシンブであった。
 息を整え、服のしわや荒れた髪を綺麗に直して、彼女を待つ。
「おまたせぇ〜」
 メイがやってきた。すぐさまシンブに抱きつく。
「大丈夫ですよ。それよりも大丈夫でした?」
 シンブは先ほど通ってきた試練の数々を思い出し、メイに訊ねる。
「うん。まぁぼちぼちと、かな」
「うん、よかった」
 お互いににこっと微笑みあう。
「あ、これプレゼントです。受け取ってもらえますか?」
 そう言ってメイが差し出したのは、綺麗にラッピングされた、手作りのお菓子。
「ありがとうございます。実は私も持ってきているんです」
 シンブも持ってきていたお菓子をプレゼント。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい」
 2人のランララ聖花祭は、今、始まったばかり……。


イラスト:爽見 雍