● 。*゜初めてのプレゼント〜幸せな一時〜゜*。

「クリちゃん早く来ないかなぁ〜?」
 女神の木に寄りかかりながら、キットはそわそわと呟いた。
 今日は、クリと一緒に過ごす初めてのランララ聖花祭。
 クリが恥ずかしいと言うから朝早くに待ち合わせの約束をして、張り切ってお菓子を作って……。
 ドキドキしながら家を出て来たら、どうやら、少し早めに着きすぎてしまったようだ。
 きらきらとした朝日を見ながら、キットは期待に胸を躍らせてクリが来るのを待つ。
「……そろそろかな?」
 やがて来る約束の時刻。
 まだかな? まだかな? とクリが来るだろう方角を見るが、その姿はまだ見えない。
「……クリちゃん、どうしたのかな?」
 それから、しばらく時間が過ぎても、やはクリが現れる様子はなくて。次第に、クリに何かあったのではと、不安と心配が胸の底から現れ始めた頃……。
「キット!」
 丘の下から走って来る、クリの姿が目に入った。彼の姿を目にして、ほっと安堵しながら歩み寄るキットだが、ふと、彼の目の下に、クマがある事に気付いて、またその顔を心配げにする。
「クリちゃん、そのクマどうしたの?」
「いや、それが……」
 ちょっと躊躇して、頭をかきながら言いにくそうにするクリ。でも、キットがずっと心配そうに見ているから、言わない訳にもいかなくて。
「……今日がすごく楽しみで、昨日、なかなか寝られなくて夜遅くまで起きてたんだけど、気付いたら朝で……」
 そうぼそりと呟けば、なぁんだーと再び安堵するキット。
 遅れてきたのは不安になったけど、ちゃんと来てくれたのだし……それに、楽しみにしていたのは彼も一緒だと分かって、むしろ何だか嬉しくなってしまう。
「はい、クリちゃん」
 だから気にしないでねと言いながら、キットはこれまでずっと大切そうに抱えていたピンク色の箱を差し出した。
 中身は、ココア味のパンケーキ。
 胡麻以外の物を克服しようと頑張っているクリが、最近食べられるようになった物の1つを選んで、今日の為のお菓子に仕上げたのだ。
「美味しそうだな。本当にいいのか?」
「うん、クリちゃんの為に作ったんだもん」
 にこにこ頷き返すキットに、じゃあ早速とフォークを取るクリ。
 彼は一口食べると、とっても嬉しそうに美味しいと笑う。
 そんな姿を見ていたら、キットの方まで嬉しくなってくる。
「ね、クリちゃん。これからデートしよっか」
「そうだな、どこ行く?」
 その誘いに、すぐさま頷き返すクリ。
 まだ朝早いランララ聖花祭の日を楽しもうと、二人は歩き出すのだった。


イラスト:総裕