● ランララ聖花祭・朝露の花園で再び…

 去年と同じ場所。
 そこにミリィは立っていた。
 風が吹くたび、ゆらゆらと花が揺れている。
「う〜ん、ちゃんと来てくれるかな?」
 きょろきょろと辺りを見わたしていると、遠くから見知った人影が見えた。
「だから、手加減しろってな……。なんか去年も言った気がするが」
 ボロボロになりながらも、ミリィと約束を交わしたヨウだ。
「あ、来た来た♪ お疲れ様〜」
 ミリィは嬉しそうにヨウを出迎える。
「お待たせだな。ほんと疲れたよ……」
 そういうヨウにミリィはくすりと笑う。
「はい、今年もちゃんと用意してきたよ♪」
 そして、持ってきたプレゼントをミリィは差し出した。
 愛情いっぱいのチョコレート。
「ありがとさん」
 受け取り、ヨウの頭にもやもやとした何かが思い浮かんだ。

 ぽわわわ〜ん。
『ヨウ♪』
 ミリィは素肌の上に、ラッピングリボンを体に巻きつけていた。
 その口には甘いチョコレートが一つ。
 そのチョコレートと、自分を差し出すかのように、ヨウの目の前に……。

「……どうせならミリィ自身をラッピングして……」
 すっぱーんっ!!
 夢見るヨウ。ミリィの強烈なハリセンの一撃で、現実へと戻ってきた。
 一撃を食らったところが、とてつもなく痛いのは……きっと気のせいだろう。
「その代わり……というわけじゃないけど……」
 ミリィは、ヨウにあげたチョコレートをひとつ摘んで、口にくわえて、背伸びして。
「んっ……」
 瞳を閉じて、ヨウにその口にくわえたチョコレートを差し出した。
「おっ!?」
 ヨウは驚きながらも、それを口で受け取り、そのまま唇を重ねる。
 長くて甘い、二人だけのキスの時間。
「ん、甘くて美味しいよ。チョコと……ミリィもね」
 チョコを食べ終わったヨウはそういって、ミリィに微笑む。
「ふふっ……ありがと。まだたくさんあるから、ね?」
 ミリィは照れながらも、満面の笑みを見せていた。

 さわさわと花が揺れる。
 いたずらな風のせい?
 それとも……その後、残ったチョコも全部口移しで食べていた、熱い二人のせい?
 それは揺れる花と、そこにいる二人だけが知っている。
 幸せなランララ聖花祭を、去年と変わらぬ、この場所で……。


イラスト:たぢまよしかづ