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さえずり事変
どこもかしこも、幸せそうなカップルばかりのランララ聖花祭。
もちろん、このセレとツバメの二人も、幸せな時間を過ごしていた。
そう、そのときまでは。
心地よい日差しを浴びながら、セレと二人はさえずりの泉に来ていた。
「ねえ、ツバメさん。木登りしません?」
セレの言葉にきょとんとするツバメ。セレは笑顔で続ける。
「ふふ……私、木登りは得意なんですよ」
渋るツバメにセレは笑って手を引く。
そんなセレにツバメも、思わず微笑んだ。
「ほな、登りますえ。手助けしてもろうてもええですか?」
「喜んで」
そして、登った幹の上。
「う〜ん、いい天気やなぁ……泉もきらきらしてて滅茶綺麗やし……」
ツバメが感心して、辺りを見わたした。
高いところから見る景色は格別であった。柔らかな日差しを受けて輝く泉。そして、空を舞う小鳥の近い事、近い事。手を伸ばせばすぐつかめてしまいそうであった。
「ええ、とっても。木洩れ日も湖面も、キラキラ輝いて。……貴女が居るから、なおさら綺麗に見えるんでしょうね」
「せ、セレはん……」
セレの言葉に思わず頬を染めるツバメ。
「せ、折角のランララやし、お弁当……サンドイッチ作ってきたんやけど」
そういって、ツバメは手に持っていたバスケットを差し出した。その中にはたくさんのサンドイッチが詰め込まれている。
セレはそのバスケットから、サンドイッチを一切れ、手に取った。
「ね、ツバメさん。あ〜んして」
「って、あ〜んはええからっ! あ〜んはっっ!!」
慌ててツバメそれを止めさせようとするが。
「いいからいいから。ね。ほら、あ〜ん」
そんなセレの微笑みにツバメが降参した。
「もう……仕方ありまへんなぁ……」
実は満更でもなかった様子。あーんとセレから渡されるサンドイッチをぱくんと食べた。
「うむ、我ながら美味し……」
そのツバメの幸せな時間は、次のセレの一言で終わりを告げる。
「っはは……雛鳥みたいですね?」
何気ない、悪気無い一言だったのだが……その一言が余計であった。
かちーんと、ツバメの顔が固まり、そして。
「そ……それ言わはったら、あきまへんーーっっっ!!」
ずべしっ!!
「うわあっ!!」
ざばーーーんっ!!
哀れ、セレはツバメの見事なハイキックで、泉の中にどぽーんと落ちていってしまった。
「わ、あわっ!! つ、ツバメ……さんっ!!」
慌てるセレ。だが、ツバメは木の上で全く気づいていない。
「確かに雛かもしれへんけど……けど……」
いや、ツバメはツバメで、かなり凹んでいるのだ。
数十分後。
哀れなセレは救出される。周りにいた他のカップルの手によって。
こうして、二人のショッキングなランララ聖花祭は幕を下ろしたのであった。
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イラスト:橘平
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