● 甘い時間

 ランララ聖花祭の日。
 ガルスタとアティは、朝露の花園に腰を下ろして、お茶の準備をしていた。
 アティは僅かに微笑み、そっと箱を差し出した。
「開けていいか?」
「……ええ……」
 綺麗にラッピングされた箱を開くと、そこには白と黒の生チョコを使ったトリュフが入っていた。
「では、私からも」
 ガルスタがそう言ってアティの前に差し出したもの。
「チョコレートケーキ……」
 まあと、手を合わせて驚くアティ。
 そのケーキはスポンジとスポンジの間にオレンジピールとマーマレードを挟み、甘みを抑えたものであった。
「さて、始めようか」
「……ええ……」
 ガルスタがケーキを切っている間に、アティが暖かい紅茶を注ぐ。
 アティとガルスタは、紅茶とケーキを一つ交換した。
「ありがとう」
 ガルスタは紅茶を受け取り微笑む。
 アティも静かに微笑む。
 花園の彩り豊かな花に囲まれながら、アティは幸せそうに微笑み、ケーキを頬張った。
 ガルスタも甘いチョコレートを味わいながら、アティの注いだ紅茶を口に含む。
「何だか新鮮だな」
 思わずガルスタが呟く。
「新鮮?」
 首を傾げるアティにガルスタは優しく微笑みかける。
「ほら、いつも一緒に料理しているだろう? 今回は一人で別々に作った訳だし……」
 考えても見れば、二人とも甘いものが好きで、一緒にケーキを食べに行ったりすることも多々あった。
 でも今回は、お互い、相手のために作って、こうして食べあっている。
 愛情いっぱいの甘いお菓子。甘さを抑えているはずのケーキも、トリュフも、いつもより甘く感じるのはきっと……。

「愛している」
 静かにガルスタはアティに告げた。
 何度となく告げた言葉。けれど今日は違う響きを感じた。
「……愛して……いるわ……」
 アティはそっとガルスタに寄り添い、僅かに頬を染める。
 そんなアティの様子に、ガルスタも幸せそうに瞳を細めた。

 ランララ聖花祭の二人だけのお茶会。
 二人にとって思い出深い日になったことだろう。
 そう、この日は二人にとってもう一つの意味を持っていた。
 去年のこの日、皆に祝福されて、結ばれた結婚記念日だという事を……。


イラスト:シブ