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幸せのひと時〜それはチョコレートより甘くて〜
「ハートさん」
「ゼフィさん!」
小鳥のさえずりが聞こえる泉で、二人は揃って出会った。
実は揃って出会えたのには、理由があった。
「え? そうなんですか?」
思わずゼフィが聞き返す。
「そうなんですかって……え?」
「じ、実は私もなんです……」
この二人、試練のルートは違えど、同じ回数、丘の麓まで戻されていたのだ。
だからこそ、こうして揃って出会えたのだ。
「偶然だね」
「はい。なんだか、ちょっと……素敵ですね」
ハートとゼフィは微笑み合い、泉を歩き出した。
ぱしゃりぱしゃりと水が跳ねる。
「きゃ、つ、冷たいですよ……」
楽しそうに声をあげるゼフィ。
「ははは、ほら、見てよ。綺麗だよ」
ハートもはしゃぎながら水をかける。水しぶきが光を受けて、小さな虹を見せていた。
二人の目には、その小さな虹がとても美しく映った。
「疲れちゃったね、ちょっと休もうか」
しばらく泉で遊んだ二人。ハートの提案で泉の畔で、休憩する事になった。
「あ、では……よかったら、このクッキー……いかがですか?」
ゼフィはずっと持っていたバスケットを開き、美味しそうなクッキーを取り出した。
「うわあ……これ、全部ゼフィが作ったの?」
ハートの言葉にゼフィはこくりと頷いた。
「凄い、凄いよ! ……ねえ、食べてもいいかな?」
「どうぞ……」
さっそく、ハートはゼフィのクッキーを食べる。
「うん、とっても美味しいよっ!」
「……よかった……」
嬉しいハートの言葉に、ゼフィは頬を染めながら、嬉しそうに微笑んだ。
また二人は歩き出す。
ちょっと違うのは一つだけ。
「あっ……」
「え、えっとその……ほら、人が多いから迷子にならないようにって」
ハートはそう言って、頬を染めていた。
「……はい。迷子にならないように……」
ハートは優しくけれど、しっかりとゼフィの手を繋いでいた。
(「これからも一緒に過ごしたいな。そしたらきっと、ぎこちなさは無くなっていって、もっと楽しめると思う。もっと知ることがあると思う。……あっという間に時が過ぎてしまっても、できるだけ長く、この手を繋いでいたい……」)
ゼフィは自分のバスケットを見た。そして、今繋がっている手を見た。
(「彼の笑顔は太陽みたいで、とても愛しくて……横で見ている私の心も温めてくれる。この人の側なら……私は思ったことに素直になれる。ちょっとだけ大胆にもなれるのかもしれない。……まるで魅了の魔法にかけられたみたいに。ずっと彼の手を取り合っていたい。一緒に笑っていたい……触れ合っていたい、ずっと……」)
暖かい手の温もりを感じながら、ゼフィはそっと握り返した。
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イラスト:赤霧天樹
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