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木漏れ日の下で……餌付け中?
さえずりの泉の側にある木の下で腰掛けながら、二人は聖花祭を楽しんでいた。
「ここがさえずりの泉か。結構、綺麗だし……みんなが噂するのもよくわかるかも」
「ええ、そうね。今日は二人で来る事が出来て、嬉しいわ」
実はこの二人。今回が初めてのランララ聖花祭だったりする。
クィンクラウドが泉に気を取られている間に、レインは自分の用意したお菓子を取り出した。
作ってきたのは、美味しそうなザッハトルテ。
(「好みの味が分からなかったから、これを作ってみたんだけど……」)
レインは少し不安げにクィンクラウドに訊ねる。
「クィンさん甘いもの……平気かしら?」
レインの声にクィンクラウドが振り向く。
「大丈夫。どっちかてーと苦いものの方が苦手だ」
嬉しそうなそのクィンクラウドの言葉に、レインは安堵する。
「よかった……」
レインは微笑み、さっそくザッハトルテを取り出し、切り分けた。
その様子を眺めていたクィンクラウド。しばし考え、何かを思いついた。
「なあ、レイン」
「何ですか、クィンさん?」
「食べさせてー」
レインの目の前には、口をあーんと開けて、楽しそうに待っているクィンクラウドの姿が。
その様子はまるで、餌を待つ雛鳥のように見えた。
レインは思わず笑みを零す。
「あーん」
もう一度呟くクィンクラウドに。
「ちょっと待って。……はい、どうぞ」
レインは、ザッハトルテを一口大に切り、フォークでクィンクラウドの口の中に入れてあげた。
「ん……美味いっ!」
にっこりと満足げに微笑むクィンクラウド。
クィンクラウドの喜ぶ姿を、レインは嬉しく、そして愛おしく思うのであった。
(「クィンさんの為に作って、本当によかった……」)
二人の側では、それぞれのペットであるオウムと猫も二人の様子を見守っている。
二人の幸せな時間は、緩やかに過ぎてい。
レインは幸せすぎるこのときを、いつまでもいつまでも心の中で抱きしめていた。
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イラスト:鳥居ふくこ
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