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Bitter Sweet Night
夜の星屑の丘。そこに二人はいた。
ここに誘ったのはアナイス。
二人でこういう風に出かけるのって初めてじゃないかしら?
側に居るミケーレを見ながら、アナイスはふと思う。
ランララでは、女性の方から声をかけることが多いみたいだし、季節に乗っ取って、ちょっとだけ恋人気分を楽しむだけの人がいても……いいわよね。
……私だけかしら……。
少し不安になりながらも、星降る夜空を見上げた。
「そう、たまには……ね」
(「アナイスに誘われてきたが……そうか、今日は例のイベントだったか」)
思い出したようにミケーレは辺りを見わたす。恋人達の姿が数多く見られる。
ミケーレ自身、人が多いのは嫌いではない。だが、この手のイベントは得意分野ではない。どちらかというと苦手な部類に入るだろうか。
「人が多いと景色もゆっくり楽しめないから、もう少しあっちに行ってみましょう」
アナイスの提案にミケーレも頷く。
「ねぇ、ほら、早く。先に行くわよ」
はしゃぐアナイスにミケーレは思わず笑みを浮かべた。
「まあアナイスも喜んでいるようだし……」
たまにはこんな時間もいいのかもしれない。
そう思いながら、ミケーレもアナイスの後を追いかけた。
それにしても、と思う。
こんな所に連れてこられるとついうっかりなんて展開になりがちだが、さて年長者としてはどういった応対をするのが好ましいか……。
ミケーレはつい考え込んでしまう。
と、その瞬間、アナイスが躓き、バランスを崩しかけて……。
「っておい。そんなにはしゃいでると、危ないから程ほどにな」
すぐさまミケーレが抱きかかえ、事なきを得る。
「ご、ごめんなさい……」
「わかれば良い」
「……ミケ君」
「ん?」
アナイスの呼ぶ声にミケーレは応える。
手に持っていた紙袋から、アナイスは、綺麗にラッピングされた小さなタルトを取り出した。
「甘いものが苦手なミケ君だから、できるだけ砂糖の甘さを控えてみたの。フルーツの甘酸っぱさを生かしたタルトだから」
そういって、アナイスはにこっと微笑む。
「食べてくれるわよね?」
思わずミケーレは笑う。
「タルトなんてわざわざ作ってきたのか? そこまで言われたら断るのは失礼というものだな。ありがたく頂くとするよ」
ミケーレはタルトを受け取り、さっそく口に含む。
「うん、美味しいよ。アナイス」
そのミケーレの言葉にアナイスも微笑んだ。
……ちょっと強引だったかもしれないけど、食べてもらえて……嬉しいわ……。
言葉に出来ない思いが、アナイスの胸に溢れてくる。
……私は貴方が大好きだから……。
嬉しそうに微笑みながら、アナイスはタルトを食べるミケーレを見つめていたのであった。
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イラスト:夢観士 あさき
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