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待つ
ただ、ずっと待っていた。
彼の誕生日に失敗してしまった事。
心残りだった事。
それを取り戻したくて、この女神ランララの木の下に来ていた。
「喜んで……くれるかしら?」
来てくれる事を待って………。
時間は少し遡る。
1月20日。その日はアリアの思い人、ゼロの誕生日であった。
誕生日のお祝いをくれる方へ、何か感謝の気持ちを贈りたい。
そう思って、自分の得意なホットケーキを作って、振舞ったゼロ。
そんな彼の助けになりたいと、アリアもキッチンに立った。
「もう、何で上手くひっくり返らないかなぁ」
もたもたしていた所為だろう。
「……あれ? 焦げ臭い……」
ホットケーキの片面を焦がしてしまい、逃げるようにフライパンをゼロに押し付けてしまった。
あれから数ヶ月。
ゼロに喜んでもらえるようにと、仕事の合間を縫って、練習を重ねた。
その結果、やっと焦がさずにホットケーキを焼けるようになったのだ。
アリアはランララ聖花祭の日に、焼きたてのホットケーキを持って、ランララの木がある丘の上へと向かったのである。
そして、当日。
気づけばもう夜になっていた。
周りには殆ど、人はいない。
アリアは俯きながら、綺麗にリボンをつけた箱を持っていた。
暖かかったケーキも、もう冷たくなっている。
「あっ……」
日が暮れ、星が瞬く頃にアリアは気づいてしまった。
「約束……していなかったわ」
失敗したわねと、思わず苦笑を浮かべた。
と、アリアの視界が歪む。
「や、やだ……何やってるんだろ、私」
来ない人をこんなにも待って、一人になっている。
「……帰ろう、かな」
冷めたホットケーキを手に、アリアは帰ろうとしたとき。
「あっ……」
アリアの方に向かって、一人の青年が走ってくる。
青年はアリアの姿を見て、嬉しそうに微笑み手を振った。その腕には特殊な腕輪が見える。
アリアの瞳から、また涙が零れた。
「い、いつまで待たせるのよ! お陰でホットケーキ、冷めちゃったじゃない」
零れた涙を拭い、アリアはゼロに向かって、笑顔を向けたのであった。
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イラスト:SAKURA
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