● 『来てくれたの?』『待っている気がしたからな…ほら』

(「周りの人達も、すっかりいなくなってしまいましたね……」)
 数え切れないほどの星達が、きらきらとまたたく空の下、レラはそう寂しげに微笑んだ。
 星屑の丘は、とても綺麗な夜景が見れる……。
 でも、こうして1人で見上げたのでは、その輝きも色褪せて感じる。
「……仕方ない、ですよね。最初から、来ない事は知っていたんですから」
 彼が、ここに来ないのは、とても当たり前のことなのだ。
 だって、本人から直接、そう聞いていたのだから。
 それでも、どうしても諦め切れなくて、この場所まで来てしまった自分が悪いのだ。
 そう分かっていても、寂しさは募るばかり……。

「レラ」

 その時、後ろから聞こえた声に、レラは慌てて振り返った。
 想いが募りすぎて、空耳でも聞こえたのだろうか?
 最初は、半信半疑だった。
 でも、そこには、確かにレラの恋人である、ガイの姿がある。

(「……本当にいるなんて、な」)
 ガイの方も、レラ見つけて驚いていた。
 今日は別の用事があったし、その事はレラにも伝えていた。
 だから、いるはずはない。彼女がここで待っているはずがない……そう、思った。
 だが、もしかしたら。もしかしたら、来るはずの無い自分を彼女が待っているかもしれないと……そう思ったら、ガイはいてもたってもいられなくなり、この星屑の丘を訪れたのだ。
 そして……レラは、いた。
 こんなに夜遅い時間だというのに、この丘にたった一人で、自分の事を待ち続けていたのだ。
 そう思うと、ガイの胸の奥底から言葉にならない想いが溢れてくる。
(「レラ、俺の大切な宝物……遅くなってしまったが、待ちぼうけさせなくて、よかった」)

「……レラ、これを」
 ガイは、まだ驚いているレラに呼びかけながら、花の冠を取り出すと、そっと彼女の頭に乗せた。
「ランララは女が男にプレゼントを贈る日らしいが……男が女に贈り物をしても、別に問題ないだろう?」
「ガイ……」
 そうガイが笑いかけると、レラもようやく微笑みを浮かべる。
「本当にガイなのね……ありがとう、ガイ。とても嬉しい……!」
 自分がいないかもしれないと、分かっているのに、それでも来てくれた。
 その事実が、とてもとても嬉しくて。
 レラはガイを見上げながら「来てくれて、本当にありがとう」と微笑んだ。

 陽が沈んで、夜が更けていっても、ランララ聖花祭が終わりを迎えた訳ではない。
 2人のランララ聖花祭は、まだ、これから……。


イラスト:影日 行