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Sweet Sweet Sweet
(「まさか、こんな日が来るとは思ってもいなかったな」)
オーディガンは、そう隣に座るセラフィンの姿を見た。
ランララ聖花祭のこの日、今自分の目の前には、こうして一番大切な人の姿がある。
女神の木で彼女と待ち合わせて、そこで貰ったチョコレートはとても嬉しくて。大切そうに両手で抱きながら紐を解いて、その中身を広げてみる。
星型のチョコレートと、ちょっと歪なチョコレート。2つの形のチョコレートがそこにはある。
「どっちも甘くて、いい匂いだな」
どきどきと、心なしか緊張した面持ちで、そんなオーディガンを見つめるセラフィン。
彼女にとって、食べ物を作るという行動は、これが生まれて初めてのこと。厨房に入る事すら初めてだったけど、それでも、彼にどうしても作ってあげたくて、チャレンジしたのだ。
……完成したチョコレートは、味見してくれた人から『口触りが最悪』とまで言われてしまい、渡すのには気が引けたけど、でも、本当に初めて作ったチョコレートだったから、せめて見て貰うだけでも、と思ったのだ。
でもオーディガンは本当に嬉しそうで、どちらにしようか悩む仕草を見せながら、星型のチョコレートに手を伸ばそうとする。
「あ……それは……おやめになったほうが……」
「ん? どうしてだ?」
星型のチョコレートこそ、まさに酷評されたチョコレート。一方、歪な方のチョコレートは、見た目こそ不恰好だが、味の方はそれなりの出来上がり。
味の面ではもう片方の物を……そうセラフィンは勧めようとしたのだ。
「だが、どちらもおまえが懸命に作ってくれた物なんだろう?」
なら自分にとっては一緒だと、オーディガンはあえて星型のチョコレートを口に放り込んだ。
さくさく、というよりじゃくじゃく、とした感触と共に広がる、とてもとても甘い味……。
オーディガンは普段、甘い物はあまり食べない方だが、この甘さは不思議と心地良かった。
「美味しいな」
「本当ですか……?」
素直に告げるオーディガンだが、セラフィンはなおもどこか不安そうに見えて。
そんな彼女を見つめながら、オーディガンはもう1つチョコレートを取ると、そのまま口に入れて。
舌で溶かしながら、そっと、セラフィンにキスをする。
「ん……」
それは、とてもとても甘いキス。
重なり合った二人の唇から、互いに互いへ、甘く甘くチョコレートが溶けていく。
(「まるで、今の私の気持ちのようにござりまする……」)
口に甘みと一緒に広がっていくのは、幸せの味。
「……これが、俺の気持ちだ」
やがて離れたオーディガンの言葉に、セラフィンは恥ずかしそうにしながらも微笑み返した。
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イラスト:梅田ユキオ
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