● 星降る夜に甘いひと時

 ランララ聖花祭の夜、クワイアとレシュノが星屑の丘へ来ていた。
 無数の星達がきらめく夜空の下、肩を寄せ合いながら、二人は静かに星空を見上げる。
 その首には、長い長い1本のマフラー。それを二人で分け合うように巻いて温まる。
「なんか、こういうのって初めてっスね」
 空を見上げたまま、レシュノは呟く。
 これまで、二人で静かにお酒を飲むような事とかはあったけれど、こんな風に静かな時間を過ごし合うのは、これが初めての事のような気がする。
「ワタシの性格っスかね? でも、なんか幸せっスよ、クワイア」
 普段とはちょっと違うかもしれない。でも、これもまた良いとレシュノは思う。
「俺もだ、レシュノ。今日はありがとな?」
 その言葉に一つ頷いて、耳元に告げるクワイア。そのまま、そっと彼女の肩に腕を回し、後ろから抱きしめる。
「とってもあったかいっス。星、綺麗っスね……」
 そのぬくもりを感じながら、レシュノは呟いて、また空を見る。
 二人の頭上には満天の星空。
 それだけを見つめ、視線を交し合っていなくても……心はどこか繋がっている。

「ほら、流れ星だ」
 そんな中、不意に二人の視線の先を星が流れていく。
 クワイアはそれをレシュノに知らせながら、その尾が消えてしまう前に、クワイアは願い事をかける。
「うう、間に合わなかったっス……。クワイアは何をお願いしたっスか?」
「お前と、ずっと一緒にいれるように……な」
 見上げてきたレシュノに、そう返すクワイア。彼の返事に、レシュノは微かに微笑んで。
「……ワタシもクワイアとずっと一緒に居たいっス」
 少しだけ頬が熱くなるのを感じながら、そう告げると、クワイアからも笑みが返る。

「そろそろ冷えてきたな。寒くないか?」
 次に流れ星が見えたらワタシもお願いするっス、なんて笑うレシュノの為に、次の流れ星を待ちながら、クワイアは脱いだコートを彼女の体を温めるように掛ける。
「大丈夫っスよ、それに、それじゃあクワイアが……」
「俺は大丈夫」
 慌てて返そうとするレシュノだが、そう言い切ったクワイアの言葉に、じゃあとその気遣いを受けて。
 二人は、一緒に空を見上げ、次の流れ星を待ち続けた。


イラスト:井住