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愛しき者の温もりを感じて…
ゆっくりと歩きながら、二人はさえずりの泉に到着した。
僅かに冷たい風が、フォミリンスとレイスの横を過ぎていく。
「先程まで色々あって、顔が熱いので丁度いい涼しさです」
フォミリンスは弾んだ声でそう、レイスに告げた。
つい先ほど、女神の木の下で、何度かキスを交わした二人。
そんなことをまた思い出して、フォミリンスの頬はまた火照りだした。
早く冷めてくれればいいのに。
そうフォミリンスは願う。
風は涼しく冷たいが、そうすぐには冷えてくれないもの。
それに、思い出したキスは、また彼女の頬を熱くさせる。
頬だけでなく、鼓動も早くなりそうだ。
早く収まって欲しいと願いながら、フォミリンスは胸を押さえる。
火照った頬に、心地よい風が、また吹きぬけた。
「んーそうだなー。でも寒くなったら言えよ? いつでも俺のコート貸すから」
そう気遣うのは、隣に居るレイス。フォミリンスに優しげな笑みを向けている。
けれど、その言葉にフォミリンスは、不満な声を上げた。
「ぇ……一緒に入ってくれないんですか?」
照れながら見上げてくるフォミリンスの表情に、一瞬どきりとしながらも、レイスは答える。
「ぇ? ああ、もちろんいいよ」
「よかった」
そういってフォミリンスは安心したように、また微笑んだ。
少しでも触れたい。
そんなレイスの気持ちを読んだのだろうか?
それは本人しか知らない事。
でも、フォミリンスが望むのなら、自分はずっとそばにいる。
ずっと、ずっとフォミリンスに触れていたいと……。
しばらくした後、フォミリンスは少し震えて、両腕を擦った。
「ちょっと肌寒くなってきましたね」
呟くようなフォミリンスの言葉に、レイスは自分のコートを広げて、ちょいちょいと手招きする。
「おいで」
それに気づいたフォミリンスは、言われるままに彼のコートの中に入っていった。
レイスは後ろからフォミリンスを抱きしめ、照れながらも優しく微笑を浮かべる。
「あったかいですね」
フォミリンスも照れながらも微笑を浮かべた。
互いにとって、大切な者のぬくもり。
暖かい温もりを感じながら、二人はゆっくりと、ランララ聖花祭を楽しむのであった。
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イラスト:ひうが
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