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繋いだこの手永遠に…
せっかく決めてきたのに。
ミシリアは、なかなか、その一言が言い出せなかった。
勇気が足りない。
そうかもしれない。でも、今日は……。
「で、今日は何の祭りなんだ?」
どうやら、アレックスはランララ聖花祭が何の祭りなのかを知らずに来た様子。
アレックスの言葉にミシリアは思わず苦笑を浮かべた。
「そうね、分かりやすく言えば、親しい人にお菓子を渡すお祭りね」
「ふうん……」
かなり遠まわしの答え。それでもアレックスにとっては充分だったらしい。
とはいっても、肝心の『告白』の部分をワザと抜かしているあたり、ミシリアもまだ本当の事を言えずにいるようだ。
「これ、紅茶のクッキー♪ あまり甘くないから、お酒にも合うわよ」
「お。酒にあうのはいいな」
アレックスは、さっそくミシリアから差し出されたクッキーを、ひとつ摘んで口に入れる。
「美味しいよこれ! できれば酒も一緒だと嬉しいんだけどな」
そう苦笑するアレックスに。
「そういうと思ったわ。さあ、どうぞ」
準備のいいミシリア。すかさず持ってきたグラスにお酒を注いでいく。
「お、サンキュ!」
少し不安げな二人の聖花祭は、こうして和やかに始まった。
お酒とクッキーに彩られた時間はゆっくりと動き出す。
ふと、ミシリアはそれに気づいた。
「あ、クッキーついてるわよ? とってあげるわね♪」
身を乗り出し、持っていた白いハンカチでアレックスの口元を拭う。アレックスの口元についていたクッキーはミシリアの手によって綺麗に取り除かれた。
「言ってくれれば、自分でとったのに」
とはいうもの、恥ずかしかったのか、少し頬を染め、照れている様子。
「で? 何か話があるんじゃなかったか?」
そう、話があるからと事前に告げていたミシリア。アレックスに言われて、少し戸惑い、けれど最後には、心を決めて。
「わわわ……私、貴方の事が好き!」
叫ぶようにミシリアは続ける。
「夜も眠れなくなるくらい……それは友達としてじゃなくて……」
最後はしどろもどろに顔を真っ赤にさせながら、ミシリアはやっと、彼に告げることができた。
そう、ミシリアが言いたかった事。
それは、アレックスの事が好きだという気持ちを相手に伝える事であった。
「……それって……」
アレックスは驚きながらも、照れたように頬を染めながら、言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。
「俺は、そんな大した奴じゃないぜ? それでも……それでも良ければ、これから守らせてくれ」
真剣なアレックスの眼差しに、ミシリアは涙を滲ませた。
「……嬉しい……」
こんな形で両思いなれるとは思っていなかったから、余計に。
泣くなよと言うアレックスの側でミシリアは涙を零しながら、笑顔を見せた。
気が付けば、二人は寄り添って眠っていた。
気持ちのいい日差し。そして、お酒に疲れもあったのだろう。
二人は気持ち良さそうに眠っていた。
その手にはしっかりと互いの手を握って。
夕方になって、目覚めるまで、その手は離れなかった……。
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イラスト:橘平
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