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幾多の光の下 幸せなひととき
夜の星屑の丘。
少しのんびりと散策した後、二人はゆっくりと草原に腰を下ろした。
「あ、そういえば……これを、ルラさんに……」
思い出したようにカイジはポケットから、小さな包みを取り出し、隣にいるルラに手渡した。
「開けてもいいかな?」
「どうぞ」
カイジから受け取った包みを、ルラはさっそく開けてみた。
「わぁ、花の形でかわいい♪」
そこには、柚子を使って花を模した、楓華風のパイがあった。
小さく食べやすいよう一口サイズにしたものが、いくつも入っている。
楓華風……それは、楓華出身のルラが喜ぶようにとカイジの暖かい配慮であった。
柚子の爽やかな香りが、ルラに懐かしさを与えていく。
ルラは遠慮がちに。
「カイジ、これ……ここで食べてもいいかな?」
不安そうに訊ねる。
「もちろん」
そう言って促すカイジに、ルラは笑顔で一つ、口に運んだ。
「うん。おいしい♪」
ルラは幸せそうな笑顔をカイジに見せたのであった。
その笑顔にカイジはほっと胸を撫で下ろす。
ルラのために楓華風のお菓子をと作ったのだが、ルラの笑顔を見るまで不安であった。
けれど、こうして、ルラの喜ぶ笑顔を見る……それだけで幸せであった。
と、目の前にカイジの作ったお菓子が差し出される。
「わたしだけじゃなくて……カイジも……」
ルラは貰ったパイをカイジにも差し出したのだ。
「では、いただきますね」
カイジはそれを受け取り、さっそく頬張る。
おいしいだけでなく、甘い幸せをも感じた……。
普段と変わらない幸せそうな二人の姿が、そこにある。
それが場所が、空が違うだけで。
「……愛してます、よ」
普段決して口にしない言葉が出てくるのは、何故だろう?
カイジのその突然の言葉にルラは、返す言葉が見つからない。
言葉の代わりに、ルラは俯きながらも、そっとカイジの手に触れる。
暖かいルラの温もりが、ゆっくりと手に伝わっていくように……。
二人はまた、笑顔でお菓子を口にする。
空には、見守るように祝福するかのように星が瞬いていた……。
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イラスト:摩宮靄羅
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