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〜DEAD OR LOVE〜
女神の木の下で待ち合わせ、ゼノスとオフェーリアは星屑の丘を訪れていた。
柔らかい月の光と、きらめく星達の下で、二人は手頃な場所を見つけて腰を下ろす。
「あ、あのね、これ……ゼノスに、なんだよ」
そう、ちょっぴり頬を赤くしながら、オフェーリアは小さな包みを差し出した。
中身は勿論、ランララ聖花祭にちなんで用意した手作りのお菓子だ。
「いいのか……? ありがとう、オフェーリア」
彼女からのプレゼントを、嬉しそうに受け取るゼノス。早速、リボンを解くが……。
「…………………………」
中身を目にした瞬間、ゼノスの額に汗が滲む。
(「これは、この黒い物体は……!?」)
ぱっと見はカップケーキ、というかカップケーキの容器に入っているが、中身がどんなお菓子なのかは黒すぎてよく分からない。そもそも、この容器が無かったら、お菓子というより『謎の黒い物体X』にしか見えなかったに違いない。
「み、見た目はちょっと不恰好になっちゃったけど、味の方は保障つきだよ。隠し味にワサビを使ってるんだけど、これがまたいい具合に効いてて美味しいんだから」
「……………」
ゼノスの微妙な表情に気付いてか、そう味見の結果を語るオフェーリア。
だが、その言葉に更に、ゼノスの沈黙は深まる。
何故ならば、オフェーリアは無類のワザビ好きだからだ……!
(「この大きさから察するに……洒落にならん量が盛り込まれているに違いない……」)
彼女からのプレゼント、無下には出来ない。
こんな風に誰かに何かして貰う経験だって、そうそうある事ではない。
何より、大切なオフェーリアが自分の為に作ってくれた物なのだから……。
「よ、よし。じゃあ、いただきます……!」
覚悟を決めた。
ゼノスはごくりと唾を飲み込んで、ひと思いにそれを口に中に放り込む。
「―――※●△#■☆※○◆▽!!!!!」
よく分からない叫びが出そうになるのをぐっと堪える。
どうかな? 美味しい?
そんな視線を向けてくるオフェーリアを悲しませる訳にはいかないと、ゼノスは顔が引きつりそうになるのを全力でほぐしながら、笑みを浮かべて、こう告げた。
「砂糖の甘みとワサビの触感が混ざり合って……オフェーリアらしい味のお菓子だな」
「そう? 気に入ってくれた? 本当は、ゼノスがなんて言うか、ちょっと不安だったんだよね……。でも良かった。また、今度作ってあげるからね!」
「あ、ありがとう……」
ゼノスの笑みに嬉しそうに笑うオフェーリア。
そんな彼女の満面の提案に、ゼノスは力無い笑顔のまま、頷き返すしかなかった。
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イラスト:神谷
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