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−Macmillan Nurse−
「え、お前、知らなかったのか?」
現れたシリウスが不意に発した言葉に、クリスはそう思わず呟いた。
今日はランララ聖花祭。そしてここは会場の1つ、さえずりの泉。
だというのに、クリスの誘いを受けてここまで来たシリウスは、こう言ったのだ。
「ランララ聖花祭か……よくわからないが、たまにはこういうのも悪くない」
……と。
「……ったく、ランララの意味も知らないなんて。ちゃんと調べとけよな?」
そう口では言いながらも、それでも来てくれたシリウスに、クリスは素直に感謝を感じる。
もちろん、彼の様子に呆れないといえば嘘だけど、そもそも誘った側も「初めてのランララ聖花祭。別に恋人って訳じゃないけど、心許せる仲間だからって事で……シリウスでも誘ってみるか」くらいの物だったから、ある意味おあいこかもしれない。
「……つーわけで、これ、お前に」
かいつまんで簡単に、お菓子をプレゼントする日なんだと説明したクリスは、そう包みを取り出した。
中身は、白薔薇の形をしたチョコレート。花びらの部分が1つ1つ取れるようになっていて、まるで花びらを摘むような感触を楽しめる……そんな一品だ。
「チョコか、綺麗だな……」
「だろ?」
シリウスの素直な反応に、クリスは満足げに頷きながら「まあ普段の礼と思って受け取ってくれよ」と、それを笑顔で彼の方へ押し出す。
これまで、ずっと独りきりで悲しい定めを背負い続けてきた親友が、ひとときでも喜んでくれるように……。
そんな願いを込めて。
「……ありがとう、貰うな」
そのチョコレートを両腕で受け取ると、クリスが更に嬉しそうに笑う。
彼女の様子に、シリウスはぼんやりと思う。
(「……こういう、少女らしさも見せるのだな……」)
最近なんとなく一緒にいる事が多いクリスだが、彼女は育ちと気性からか、まるで少年かのようだ。あるいはそこが、シリウスにとって、一緒にいて心地よい理由の1つなのかもしれなが……そんなクリスの新たな一面を見た気がする。
「あとは、俺達の友情の証ってことで……これからも、よろしくな!」
「ああ……よろしくな、クリス」
そんなシリウスの胸の内には気付かず、夕日を背に笑っているクリスに、シリウスは真面目な顔で頷き返した。
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イラスト:シェル
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