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チョコと共に君を
ランララの試練を乗り越え、待ち合わせ場所で合流したセリオスとティエラン。
さまざまな場所を回り、楽しんでいた二人。
いつしか時間は夜になっていた。
たどり着いた先は、星屑の丘。
綺麗な夜空を眺められる場所でもある。
セリオスとティエランは、草原に腰を下ろし、空を見上げる。
「あの、セリオスさん……」
おずおずと、ティエランは綺麗にラッピングされた包みを差し出した。
「受け取って、くれますか?」
「もちろん」
にっと微笑み、セリオスはその包みを受け取る。
「ありがとな、ティエラン」
「いえ、喜んでもらえるだけで充分です……」
照れたように頬を染めるティエランを眺めながら、セリオスはその包みをあけた。
そこには甘いチョコレートがたくさん入っている。
さっそく一つを口の中へ。
「お味はどうですか?」
心配そうな声にセリオスは。
「ん、美味い」
簡潔に感想を述べる。けれど、ティエランにはそれで充分であった。嬉しそうに微笑むティエラン。
「……ん」
ぱくぱくとチョコレートを食べていたセリオス。
ふと、何かを思いついた。
「セリオスさ……」
どうしたんですかと、尋ねる前に。
「きゃっ!」
セリオスの手で押し倒されてしまった。
「ななな、なっ!」
慌てふためくティエランを横目に、セリオスは悪戯が成功した子供のような顔で、ティエランを見下ろしていた。
セリオスは落ち着いた様子で、ティエランの胸にそっと貰ったチョコレートを乗せていく。
「せ、セリオス、さんっ」
けれど、ティエランは分からない。押し倒されて、胸にチョコレートを乗せられて、どうしたらいいのか分からない。
「ティエラン」
そんなティエランを落ち着かせるように、セリオスは自分の唇を彼女の唇に押し当てた。
突然のキスに、ティエランの体の力が抜けていく。
「どうせ食べるなら、ティエランも一緒に食べたいからな」
ティエランが落ち着いたのを見て、セリオスはそう告げた。
「セリオス……さん……」
二人の影が重なる。
暗い丘の上で、また、セリオスは甘いチョコレートを口にする。
静かな丘で、ティエランの吐息が聞こえた。
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