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初花月の思い出 〜空の星と大地の灯火〜
「これは、もしかして……」
「そうや、旦那様を驚かせよって思うて作ったんや。その……喜んでもらえると嬉しいわぁ〜」
少し照れた様子で、カガリは用意したお菓子を差し出した。
内緒で用意したお菓子は、夫でもあるタケマルにも驚きと喜びを与えてくれたようだ。
「ありがとうございます、カガリさん」
その一言さえあれば、カガリは充分であった。
カガリとタケマルは、このランララ聖花祭に来ている。
楽しい思い出を作るために、カガリは春っぽい服を着て、めいっぱいおしゃれをしてきている。
一方、タケマルもいつもの服装の上にインバネスコートを羽織り、いつもとは違う雰囲気をかもし出していた。カガリにとっては、そんな姿も新鮮に見えてくる。
様々な場所を巡り楽しんでいた二人。
いつしか日も暮れ、カガリとタケマルは星屑の丘へとたどり着いた。
丘に登ると、急に視界が広がる。
空には満天の星々。
地上に目を向けると、灯りを灯し始めた町並みが見えた。
星も美しいが、人々が生活しているという生の息吹は、彼らに僅かながらの感動を与えたようだ。
「素敵ですねー」
「そうやねー」
二人は見晴らしの良い場所に腰を下ろして、二つの風景を楽しむ。
時折、顔を見合わせ、笑みを浮かべて。
「カガリさん……」
「ん?」
タケマルの声に振り返るカガリ。見れば幾分、緊張している様子。
「普段、あまり伝えられないんで……」
そう前置きして、タケマルは再び口を開いた。
「私は……カガリさんのことが好きで、今もずっと好きで、カガリさんのことを愛してます。……いつもありがとうございます。これからも……一緒にいて、ください……」
それを聞いたカガリはきょとんと。
「突然どうしたんや? 何を改めて……」
だが、それもほんの数分。カガリはその言葉の真意に気づいた。
めったにしゃべらないタケマル。その彼がカガリへと自分の気持ちを伝えようと、必死になって言ってくれた言葉。真っ赤に照れながら、震える声で伝えてくれた言葉。
それはなによりも嬉しい贈り物。
「旦那様ーっ!!」
思わずカガリは、満面の笑顔で、隣に居るタケマルに抱きついた。
「うちこそ、大好きやっ! ありがとうな、旦那様! 本当に嬉しいわぁ!」
ぎゅっと改めて抱きついて、その温もりに触れながら、カガリは続ける。
「おじいちゃん、おばあちゃんになっても、よろしなの」
その甘い言葉にタケマルも瞳を細める。
「ええ。その……こちらこそ、よろしくお願いしますね」
二人は寄り添いながら、町の明かりを眺めていた。
平和で暖かでないと、輝く事も見る事も出来ない灯火達。
そんな灯火達を眺めながら、二人は微笑みあうのであった。
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