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ふたりで。
きらきらと星が瞬いている。
今は夜。
ファオとアズヴァルは星屑の丘に来ていた。
丘の芝生に腰を下ろし、辺りの風景を楽しんでいる。
「これをどうぞ……」
ファオは緊張した面持ちで、用意したチョコレートを差し出した。
「ああ、先日、工房で拵えた物ですね」
ファオの差し出すチョコレートに、アズヴァルはすぐに気づいた。
「どうもありがとうございます」
微笑んで、アズヴァルはそれを受け取る。
受け取ってくれたこと。それにファオはほっと肩を下ろした。
「えと、先日お聴きしたピスタチオを入れた物なので……」
前にアズヴァルが言っていたことを、ファオは忘れていなかった。ピスタチオが食べたいという、その願いを。
「あの時に近いお気持ちの内に、召し上がって頂けると幸いです」
「わかりました。と言う事は……早めにいただかないといけませんね。今開けさせていただいてもよろしいですか?」
そのアズヴァルの心遣いにファオは嬉しく思う。
「はい、どうぞお開けください……です」
ファオの承諾を得たアズヴァルは、さっそくその箱を開いた。
「ああ、これは……上にかかったホワイトチョコレートが、まるで雪が積もった様に見えますね」
見た目でも喜んでもらえている。ファオの嬉しい気持ちが一段と深まっていく。
「それではひとつ戴きましょう」
アズヴァルはゆっくりと味わいながら、その甘い一口を楽しむ。
「ほんのり利いたビターと、ピスタチオの食感とが合わさって、上品な味ですね」
どうやら、味も合格点をもらえたようだ。ファオも嬉しくて嬉しくてたまらなくなる。
と、アズヴァルはにこりとファオに微笑みかけて。
「ファオさんも一ついかがですか? 私だけ食べているのも寂しいですから」
思わぬ申し出に驚きながらも、ファオは嬉しそうに微笑んだ。
「はい、私も1つ……」
共に味わう甘いチョコレートに、ファオは瞳を細めた。
「最近、此方でも雪が降った事が嬉しくて、大好きなホワイトチョコと雪が結びついた物なのですが……喜んで頂けて嬉しいです」
その言葉にアズヴァルも笑みを浮かべる。
二人だけの幸せな時間。
どうやら今年は、ファオにとってとてもとても幸せな一日になったようである。
ファオとアズヴァルの雪やお菓子の談笑は、夜遅くまで続けられるのであった。
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