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円満ですから
ふわふわと揺れている。
花も草も……そして、テフィンを抱えるボサツも。
「ここで、降ろしてくださいませ」
「ん、了解」
「え? ああっ!」
ボサツはテフィンを抱きかかえたまま、花園に寝転んだ。
その拍子に、ぶわりと花弁が舞う。
「もう……乱暴ですの」
「ははは、ごめんって」
言葉を交わす度に、鼻や頬やら、引っ張られたり。
痛いと言いながらも、怒る気になれないのは、不意に落とされる小さな啄ばみのせい?
怒っていたかと思えば、嬉しそうに微笑み。
時折ドキリとするような丸い瞳で覗き込む、コロコロと変わる表情に、ボサツは日常で感じられる幸せを見つけた気がした。
唇を尖らせながら、テフィンはふと、こう告げた。
「……猫を飼ってる貴方に、教えてあげますわ。愛猫家を恋人に持つ女は……猫に、妬きますの」
ボサツはふふっと笑う。それはまるで、少しからかうかのように。
「そんなもんかね? まぁ……確かに、愛染はいつも俺の横でしか寝ないけれども?」
「もう! 貴方はやっぱり、とても意地悪ですの!!」
ぷいっとそっぽを向くテフィン。
「元はといえば、貴方が私を放っておかずに……」
言いかけてテフィンは、目の前にあるボサツの鼻を摘んだ。
「俺は優しいってばー。アレだよ……常に傍に置いておくより、何も言わなくても俺の所に戻って来る鳥さんの方が愛おしいじゃないか……ってイテテテ!」
そう返すボサツ。でも、テフィンには強くつねられてしまったようだ。
ボサツのその言葉は、半分本当で半分は嘘。
愛おしいのに嘘は無い。
でも……常に傍に置いておけるものならそうしてる、既に。
そうしないのは、幸せだと感じられる彼女の笑顔を失わない為。
自由に空を駆け抜ける、鳥のような彼女を愛したから。
だから、言わない。
ふと、ボサツは赤くなった鼻をさすりながら、テフィンを見た。
「でも、察してそうだな……」
「……何かいいました?」
「いいや、何も」
ボサツはもう一度、空を見上げる。そこには一羽の鳥が、気持ちよく空を飛んでいた。
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