● 三周年記念〜4度目のランララ聖花祭〜

 ここに来るのも、今年で4回目。
 二人の始まりの場所で、約束の日で、お祝いする日になった、この日。
(「毎年ここでお互いの1年確認し合って、これからの1年もいい年になるようにする、おまじないの儀式みたいな物になってるなぁ」)
 そう思いながら、隣に居るフィリスを見つめるセイルフィン。
 今日は二人にとっても大切な、ランララ聖花祭の日。

 セイルフィンとフィリスは、二人で星屑の丘に来ていた。
 重ねられる手と手。
 フィリスはセイルフィンの手を引いて、優しく尋ねた。
「座りませんか?」
「う、うんっ……そろそろ、座ろっか」
 風を避けてくれそうな木の下にセイルフィンを促すフィリス。そして、大切な宝物を包むかのようにフィリスはセイルフィンを背中から抱きしめて座った。
(「最近、フィー君は、積極的というか大胆と言うか……」)
 セイルフィンは真っ赤になりながら、そんなことを考える。なかなか振り返れないのは、少し硬直しているせいか?
 やっと振り返り、微笑むものの、緊張して強張ってみえるかもしれない……。
「きょ、去年は……」
 誤魔化すかのように話し出すのはセイルフィン。
「去年は神様来て、ドラゴンも出て来ちゃって、戦争ば〜っかしてる1年だった気がするけどって……少し愚痴っぽいかな?」
「そんなことはありませんよ。こうして、フィンさんといられるだけで充分ですし」
 むしろどんどん言って欲しいという風にフィリスは囁いた。
「あ、ありがとう」
 セイルフィンの火照った頬がまた、熱くなる。
「あ、そうそう。フォーナの時に貰った指輪、大事にしてるよ」
 そう報告しながら、セイルフィンは自分の右腕を後ろにいるフィリスに見せた。その中指には綺麗な指輪が煌いて。
「嬉しいです、フィンさん……」
 セイルフィンに見とれながらも、フィリスは自分が贈った指輪を見つけて、嬉しそうに優しく、また抱きしめた。
「…………」
 またぎゅっと抱きしめられて、更にセイルフィンは頬を赤くさせる。
 セイルフィンの頭の中は、もう真っ白だ。けれど、そんなことはフィリスに気づいて欲しくない。
「い、いつの間にか、フィー君に抜かされちゃったね。僕よりも強くなったよ、フィー君」
 誤魔化すために言った台詞も。
「ええ、ちゃんとフィンさんを護れるように強くなりました」
 フィリスは微笑み、今度は耳元で。
「これからも一緒に居たいですから」
 もう真っ赤を通り越して、破裂寸前のよう。
 セイルフィンは空に指差し、大声を張り上げた。
「あっ! み、見てっ! 一番星だよ!」
 心を落ち着かせようにもなかなか落ち着かない。
 どうやら、今年もなかなか熱い日になりそうだ。

イラスト:雷 龍輝