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子供の前でも夫婦は夫婦
セリオスとメディス……そして、子供のセディウスの三人で、朝露の花園に来ていた。
「ようし、今度はパパと競争だ!」
「わーー!」
セリオスとセディウスは、花園で走り回りながら遊んでいる。
他にも花や飛んでくる虫、鳥などの名前をセディウスに教えてあげたりと忙しい様子。
ここは、恋人達の場所でもあるが、家族にとっても良い場所のようだ。
花園の芝生に大きな敷物を敷いて、メディスは二人の様子を暖かく見守る。
そして、遊びつかれた二人がメディスの元にやってきた。
「お疲れ様、あなた」
メディスは戻ってきた二人に、甘いチョコレートを渡す。
「わーいっ!」
体中で喜ぶセディウス。さっそく、メディスの隣に座って、静かにぱくぱくチョコレートを食べ始めた。
「ありがとう、メディス」
「どういたしまして。パパのはちょっと甘さ控えめにしていますからね」
そのメディスの気遣いがたまらなく嬉しい。
セリオスはメディスの頬にキスをして、さっそくチョコレートを食べ始めた。
「お、美味い」
「それはよかったです」
作った甲斐がありましたとメディスは微笑む。
ぱくぱくぱく。
ふと、メディスは二人の顔にある共通点を見つけた。
二人とも口の周りにべったりチョコレートがくっついているのだ。
「あらあら」
思わずメディスは笑みを零した。持ってきたハンカチでセディウスの顔を拭いてあげる。
べたり。
「あ、もう……パパったらっ」
セリオスがメディスの口元にべたべたとチョコレートを付けていったのだ。
「いいだろ、たまには。一緒に食べようぜ」
自分の口の周りにもう少し付けて。
「セリオスったら……少しだけよ」
メディスは呆れつつも、能天気なセリオスに付き合って、互いの口についたチョコレートをなめ合う。
しばらくなめ合っていると、誰かの視線を感じた。
セディウスだ。
「あっ! チョコっ! 僕も〜」
メディスの服の裾をぎゅっと掴んで、セディウスもねだる。
「あっ……」
「あらやだ……」
二人はそっと離れ、口を拭う。
そして、セディウスを抱きかかえて、新しいチョコレートを取り出した。
「はい、セディウス。あーん」
「あーん」
どうやら、二人の甘い時間は、またお預けらしい。
甘いチョコレートと愛らしい子供。
幸せな時間はこうして、ゆっくりと過ぎていくのであった。
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