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親子のてふまん〜甘酸っぱい苺の味〜
てふまんとは、旅団『蝶舞々』にて販売中の、蝶々形の焼印が押されている甘い饅頭の事である。
「キラーっ!」
カエサルは朝露の花園で、キラと待ち合わせをしていた。
その声にキラはにこっと微笑んで。
「お待ちしていたのですー」
手を振って応えた。
二人は花園の芝生に座って、持ってきたてふまんを取り出す。
「はい。これはキラの分」
「ありがとうです」
カエサルからてふまんを渡され、嬉しそうに受け取るキラ。
さっそく、てふまんをかぷっと一口。
「ん……?」
キラは思わず首を傾げる。
美味しい、とても美味しい。だが、いつもと味が違うような……?
通常のてふまんの中身は、一般的なこしあん。
今、口の中に広がるてふまんのあんは、いつもと違う甘酸っぱさを感じる。
そこでキラは、はっと気づいた。
「苺なのです!」
いつもランララ聖花祭の時期にあわせて、てふまんの新作を作るカエサル。
今年は苺が大好きなキラの為に、今年はあんに苺を混ぜてみたのだ。
「有難うです、おかーさんっ」
思わぬところでの、素敵なサプライズ。
キラは嬉しくて嬉しくてたまらない。
とびきりの笑顔をカエサルに送ると、残りのてふまんを口に頬張った。
「どういたしまして」
カエサルも見守るように微笑んで続けた。
「俺、最初はお前とこういう関係になるなんて、思わなかったんだぜ」
「それは私もなのですよっ」
ただ会って、挨拶を交わすだけの関係だった二人。
けれど今は違う。
本当の親子のように、接している。
それが、嬉しくて嬉しくてたまらない。
そうでなくては、このサプライズもなかっただろうし、そもそも苺あんのてふまんも生まれなかっただろう。
だから今日は。
「おかーさん、もう一つもらっていいですか?」
「おう! 一つといわず、たくさん食べてけ。てふまんはいっぱいあるんだからな」
二人で一緒に、甘くて幸せいっぱいな、てふまんを頬張ろう。
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