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三度目のランララ聖花祭〜誰よりも大好き〜
「静かで素敵な場所ね」
さえずりの泉を訪れたサナは、アモウを見上げて微笑んだ。
「ああ、とても気持ちいい場所だな」
彼女の言葉に頷き返すアモウ。視線を泉に向ければ、水面は太陽の日差しを受けて、きらきらと輝いている。
空は青く澄み、心地よい風が吹けば木々が揺れ。木の葉の隙間からは、さえずる鳥達の声が聞こえてくる。
木陰にそっと腰を下ろせば、そこからは泉を眺める事ができて……まるで、ここが2人だけの為に用意された、特等席のようにも思えた。
最初のランララ聖花祭は、恋人として。
次は、夫婦として。
そして今年は……親になって。
2人の関係は少しずつ変わって来たけれど、でも、最初の時から、どれだけ時が過ぎても、相手を想う心は変わらない。
(「……ううん」)
それは年を重ねるごとに深まるばかりだ。きっと今までに積み重ねてきた時間が、2人の絆を強めているからなのだろうと、そうサナは思う。
「――あのね、今年はこれを作ったの」
そう言ってサナが広げたのはチョコレートムースだった。ふんわりと漂う香りにアモウは目を細めて「美味しそうだな」と呟くと、サナの頭を優しく撫ぜる。
「ありがとう、サナ」
「ふふっ。さ、食べてみて?」
その感触に屈託の無い笑みを浮かべるサナ。
今だけは、少しだけ。あの恋人同士だった時に戻りながら、甘いひとときを過ごす2人。
「……アモウ。お願いがあるの。……甘えてもいい?」
とても美味しいと微笑みながらムースを食べるアモウを見ていたサナは、ふと、そう彼に囁いた。
「勿論です、お姫様」
彼女の言葉に笑いながら当然のように頷いたアモウに、サナはパッと顔を輝かせて。まるで小さな子猫のように、ころりとアモウの膝を枕にして寝転がる。
そんなサナの姿を、本当に可愛らしいと思いながら、アモウは彼女の髪を撫でた。嬉しそうに、気持ち良さそうにしているサナを見ていたら……アモウも自然と笑みがこぼれる。
――これが幸せ、なのだろう。
何気ないけれど、でも、大切な人と過ごす時間。それこそが。
「……ね、アモウ」
「ん?」
サナの視線に問い返せば、彼女は微笑みと共に「大好き」と囁く。
「俺も、誰よりもサナが大好きだ」
頷き返せば、求めるような眼差しが向けられて。
「ずっとずっと、一緒にいてね?」
「ああ、勿論」
アモウは、決して離れはしないと言わんばかりにサナを抱き寄せると、そのまま、そっと口づけた。
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