● ランララ聖花祭・朝露の花園で三度…

 ランララ聖花祭。
 それは恋人達の為の日であり、そして。
 彼らに大きな障害と試練が課される日でもある。

 そしてここにも、そんなランララ聖花祭の試練に挑む男がいた。
 彼の名はヨウ。今年で三度目となるランララ聖花祭を迎え、大切な人の待つ朝露の花園を目指して、試練を次々と突破していた。
 何度目になるのか、もう数え切れないほどの試練を乗り越えた、その時……。
 ヨウの目の前が開けたかと思うと、一面の花園が広がった。
 そう、彼は見事に試練を突破したのだ!
「ふっ……。そう毎年毎年、ボロボロにされてたまるかよっ」
 ガッツポーズと共に花園の奥を目指すヨウ。やがて彼の先に、白いドレス姿の女性が見えた。
「ミリィ!」
 それこそ、彼が目指していた最愛の人。ミリィに間違いなかった。
「ふふっ♪ 今年もお疲れ様♪」
 ずっとヨウが来るのを待っていたミリィは、そのまま彼に抱きつくと、彼の努力をねぎらうかのようにキスを贈った。

「はい、それじゃ今年も、ね」
 やがてヨウから離れたミリィは、そう言ってチョコレートを取り出した。
 愛情を、たっぷり詰め込んだチョコレート。
 ヨウはそれを受け取ると、早速一口かじって……甘い物を口にしたからなのか、それとも、ミリィと一緒にいることで気が緩んだからなのか……ようやく疲れを感じ始めて、花園の一角に座り込んだ。
「なあ、ミリィ。膝枕してくれないか?」
「分かりました、いいですよ」
 そんな彼の様子にくすっと笑って、ミリィも花園に座り、そのままヨウを膝枕する。

 優しい風に乗って、ふんわり広がる花園の香り。
 2人でこうして過ごしていると、なんだか、それだけで満ち足りた気分になれる気がする。
「こうしてここに来るのも三度目だね……」
 これまで一緒に過ごした時間を思い返しながら、ふと、ミリィはそうヨウの顔を見下ろした。
「ああ。……来年も、再来年も、きっとここに来ような」
 今まで共に歩んできたのと同じように、これからも。
 そう頷いて語りかけるヨウに、ミリィは満面の笑みで頷き返す。
「うん。約束、だよ♪」
 過去と同じように、未来も。
 2人でずっと共にいたいと、そう願いを込めて。
 笑い合う2人の間を、優しくて暖かい風が吹き抜けていった。

イラスト:TOMOMING