● チョコレートより甘いアナタ

 同盟に来て今年で3年。
 結婚して、夫婦になって、子供が出来て……。
 ヤトはさえずりの泉を眺めながら、思う。
 こうなるまで、ランララ聖花祭にちゃんと参加したことがなかった、と。

 今年はちゃんとランララ聖花祭に出れて嬉しいな。
 ハルキも思わず、笑みが零れる。
「お菓子も毎年用意出来てたら良かったんだけど……ごめんね、ヤト」
 今年はちゃんと用意できた。それに女神の木にお菓子を奉納してから、渡すことも覚えた。だから。
「んー? 気にするな気にするな、仕方がなかろう?」
 ヤトはそういって、ハルキの頭を優しくなでた。
 ハルキも笑顔でそれに応える。
 何度も行われたランララ聖花祭。けれど参加できなかったのは互いの予定が合わなかったから。
 ただ、それだけ。
 でも、今年は違う。
 こうして、二人で過ごせるのだ。幸せなランララ聖花祭を。

「ただ……私が作ったから、形も味も自信ないけど……」
 ハルキは肩を落としながら、お菓子を差し出す。
 手作りのフォンダンショコラ。さっそくヤトは、貰ったフォンダンショコラを口に入れた。
 口の中に優しい甘さが広がっていく……。
「……やっぱ、美味いけど甘いな……」
 その言葉に照れるように恥ずかしそうにハルキは微笑む。
 本当はフォークも用意していたのだが、それは必要なかったらしい。
 ハルキはヤトに気づかれないよう、フォークをしまう。
「まぁ、もっと甘いのもあるけどな」
「お菓子よりも、甘いもの?」
 ヤトの言葉にハルキはきょとんとした顔をした。
「俺にとっては、ハルキの方が菓子より何より甘いよ……」
 そう呟いて、ヤトはハルキに口付ける。
「ほら、甘い」
「あ……あうぅ……」
 ハルキの頬が、見る見るうちに赤く染まる。
「……愛してるよ、ハルキ……」
「私も……愛してるよ……」

 何者のも代えられぬ、大切なハルキだから……。
 嬉しいけど、恥かしいよヤト……。でも、大好きだよ。誰よりも愛しく、大切な貴方だから……。

 泉に映る二人の影が、また重なった。

イラスト:藤宮凛香