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天然ラブ夫婦
今日は待ちに待ったランララ聖花祭。
クロスと結婚して、約1年。
シルヴィアは、ふと気づいた。今日は結婚して初めてのランララ聖花祭だと。
星屑の丘にクロスとシルヴィアは、無事合流を果たした。
クロスは、黒地のシャツに灰色のズボン、に羽織っている茶色のジャケットは、豪快に上腕まで捲り上げている。
シルヴィアは、黒いドレスに鈴のついたチョーカーを付けており、その手にはクロスに渡すためのお菓子が沢山入ったバスケットが握られていた。
いつもとは違う格好。
それが、また新鮮な気持ちにさせる。
二人は程よい場所を見つけると、そこで腰を下ろした。
「クロスさん、あーんして♪」
シルヴィアはお菓子を手に、そうクロスに言う。
「な、何だか、照れるな……」
頬を染めながらも、クロスはあーんと口を開いた。
きらりと、シルヴィアの瞳が光ったのに、当のクロスは全然気づいていない。
「隙ありっ」
「んぐっ!!」
シルヴィアの手によって、大量のお菓子がクロスの口の中に放り込まれる。
喉を詰まらせながらも、何とか口の中のお菓子を食べきったクロス。
「シルヴィア……これは流石に入れすぎだろ……」
そう突っ込むクロスにシルヴィアは動じていない。
彼女の本当の狙いは、この後にあった。
「次は気をつけるわ。でも……お菓子、口についているわよ?」
シルヴィアはぐっと、身を寄せ、クロスの口元についているチョコレートを、ぺろりとなめ取ったのだ。
「っ!!」
クロスは先ほどよりも更に驚いて、顔を真っ赤にしている。
また仕掛けたシルヴィアも。
(「自分から仕掛けたのに……やっぱり恥ずかしくなってきたわ……。だって、ぺろって、やあもう恥ずかしい!」)
そう思って恥ずかしがっている。
二人はしばらく、顔を真っ赤にして俯いていたが。
「ま、まだお菓子あるんだけど……食べる?」
「あ、ああ……」
互いにぎこちない笑みを浮かべた。
けれど、それもつかの間。
二人が結婚して初めてのランララ聖花祭はまだ続く。
甘い甘い時間と共に。
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