●
紅くも甘いチョコレート
星が煌く夜。
二人はゆっくりと星屑の丘へと来た。
「やっと、ここまできたか」
ミリンをお姫様だっこして、ゆっくりと丘を歩いていく。
クオフィの腕の中で、ミリンはわあっと感嘆の声をあげた。
「とっても綺麗な星空ですね」
嬉しそうに微笑んでいる。
「ああ、こうして苦労して来た甲斐があったな」
「苦労したです?」
「ああ、とっても」
クオフィは意地悪そうな笑みを浮かべて、けれど最後にはぷっと互いに笑い出した。
「……まあいっか。こうして、おまえと一緒にこんな綺麗な星空を見れたんだからな」
そういうクオフィにミリンは声をかける。
「クー兄」
「ん?」
「口、空けてください」
「口?」
ミリンの言葉に戸惑いながらも、言われたままに口をあける。
そこに、小さなチョコレートが入れられた。
クオフィの口の中に甘い、チョコレートの味が広がっていく……。
「むぐっ」
「クー兄のために、精一杯作ったんですよ?」
言いながらミリンは、もう一度チョコレートをつまんでみせる。
ミリンの左手には小さなバスケットがあった。そのバスケットにたくさんのチョコレートが入っている。
「……サンキュ」
「じゃあ、もう一つ」
ぱくっとミリンの手にしたチョコレートを食べるクオフィ。
「甘い……」
小さく呟いたクオフィの声に、ミリンはくすっと微笑んだ。
兄弟だなんて、関係ない。
好きな気持ちに変わりは無いのだから。
「あ、クー兄! 流れ星」
「マジ?」
ミリンの声にクオフィが顔を上げる。
たくさんの星々の中に、一筋の流れ星がすっと横切った。
二人の甘くて幸せな時間は、こうして、ゆっくりと過ぎていったのであった。
|
|