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おあずけ♪
朝露の花園にたどり着いたファリアス。
さっそく、親友から贈られたティーセットでお茶を用意し始めた。
実はファリアスの誕生日は、このランララ聖花祭の日でもある。
こぽこぽと、熱いポットから紅茶を注ぎ、甘いチョコレートを一つ摘む。
「ふう、今日も美味しくできましたね」
満足げな笑みを浮かべてファリアスは、そっと遠くを見つめ、親友が来るのを待つのであった。
ぱたぱたと駆けていく少年の姿が見える。
「も、もう帰っちゃったかな?」
ファリアスの待ち人、イーグルだ。走りながら、待ち合わせ場所を見渡す。
「ファリアスっ!!」
と、見つけた。
しかもイーグルがプレゼントしたティーセットを使ってくれている。
思わずイーグルの顔が綻ぶ。
「おやおや、やっと来ましたか」
「ファリアスがチョコくれるって言うから、がんばって試練乗り越えてきたよ」
イーグルの言葉にファリアスは。
「このチョコですか?」
「うわあ、美味しそう!」
さっそくと、ファリアスのチョコレートに手を伸ばすイーグル。
「って……あれ?」
すいーっと、チョコレートが遠ざけられる。
しゅっと伸ばすも、さっとかわされてしまった。
最後にはイーグルよりも高い場所に掲げられて、ぐぐーと背伸びする羽目に。
「く、くれるんじゃなかったの〜!?」
その言葉にファリアスは満面の笑みでこう告げた。
「私の手作りを食べようなど百年早いのです」
「ファリアスの意地悪〜!」
1時間の激闘(?)の末、イーグルはやっと、ファリアスのチョコレートの獲得に成功したのは言うまでもない。
ちょっと意地悪だけれど、ファリアスが笑顔でいてくれる。
それが、イーグルにとって嬉しいことであった。
(「この先、また色々とあるだろうけど、親友として傍にいるよ」)
イーグルはそう微笑んで、美味しいチョコレートをぱくんと食べた。
ちょっぴり意地悪をしていたファリアスであったが、内心、イーグルには感謝していた。
落ち込んだ自分の話を聞いてくれて、普通に接してくれて。
(「ずっと、莫迦やれる親友同士で、いられたらいいな」)
ふっと悪戯な笑みを浮かべて、ファリアスは。
「大切な親友に祝福を」
幸せそうにチョコレートを食べているイーグルの頬に口付けした。
「えっ……?」
ぽかんとするものの……。
「え、ええええっ!!!」
そのキスの意味に気づいて、イーグルは頬を押さえて、顔を真っ赤にさせる。
彼らの幸せな甘い時間は、こうして終わりを告げたのであった。
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